
私は、弁理士と経営コンサルタントを本職とし、現在数名の相談者様の「人間関係メンター」も担っています。
そんな私は、この4月から小1の息子が少年野球チームに加入したことに伴い、「コーチ」をさせていただくことになりました。
経営コンサルタントとして過去、約400~500人の従業員様の成長に携わり、そして現在相談者様1人1人の社会での活躍と人間関係の向上に携わっていますが、こういう略歴の私が、小学生スポーツの指導者として、どのようなことを感じ、悩み、考え、行動するのか。
なるべく連載にしていきたいと考えています。
小学生のスポーツの指導に携わる方々皆様に、問題提起をさせていただき、最終的なゴールは、スポーツに取り組む全ての小学生の方々に、健全なスポーツの環境を指導者皆様と築き上げられたら幸いです。
第1話は、
『パワハラしないと、強いチームにならないの?』
です。
悲しい調査結果
私の知人が以下のような神奈川県バスケットボール協会による体罰等に関する調査結果を、共有してくれました。
(調査期間は2018年4月から1年間。2019年4月に公表。回答者数は選手および保護者685名)
バスケットボールの調査結果ではありますが、お読みの皆様の携わっているスポーツでは、全く状況は違う、と胸を張って、言えますでしょうか・・?
5人に1人は、体罰を受けている

体罰を受けた人の半分は殴る・蹴るをされている

体罰を見ても、80%の人は止められない

2人に1人は指導で暴言を受けている

なお、個別回答の一部を、この記事の末尾に、参考に「そのまま」載せています。
頷きながら読まれるかたもいれば、悲惨な状況に目を覆いたくなるかたも、いらっしゃるのではないでしょうか。
パワハラをする監督・コーチの心理
パワハラを日常的にしてしまう監督やコーチの心理は、経営コンサルタントとして多くの企業を見させていただいた経験から、以下であると推察します。
- 選手を、自分の思い通りに動かしたい。しかし思い通りに動かないから、高圧的に支配しようとする
- 自分の表現力や指導力に自信がない。だから、強く言えば強制的に理解してもらえると考えている
- 自分は指導をしてあげている、自分のほうが立場が上だ、偉い、と考えている
- 自分が監督・コーチである以上、なんとしても高い成果を上げたい、と焦っている
- 選手はどうせ何も考えていないんだから、監督やコーチが強権的に引っ張れば、それでいいと考えている
パワハラの何が大問題なのか?
こちらの記事を読んで、『え?パワハラって時には必要じゃないの?』とお感じのかたは極少だとは存じますが、では、『パワハラの何が大問題なのか?』と聴かれたら、バッチリと答えられますでしょうか。
私は、パワハラがどうして大問題なのか、を以下のようにまとめます。
- 選手たちの、「そもそもどういう動機でそのスポーツの習い事を始めたのか」がおざなりになっている
- 小学生にとって、もっとも大切な「自信」。パワハラを受けることにより、「自分はダメな人間なんだ」と思い込み、そのスポーツだけではなく、生活全般にも、「自信」を失ってしまう。
- 「パブロフの犬」のように、「ミスをすると、怒られる」という条件反射が頭に焼き付くため、ミスを恐れて、無難なプレイを選択する選手になってしまう。結果、伸びない。
- 選手に選択の余地や選択権、自由な発想を認めない指導により、選手は、自分で、「何が正しいか」を考えなくなる、発言しなくなる。指示待ち人間、イエスマンになる。
- スポーツの最たる能力は、「状況判断」と「最適なアクション」。しかし、パワハラをし続けられることにより、試合で「状況判断」能力が磨かれないため、能力の低い選手の集合となる。
- 好きだから始めたはずのそのスポーツ。パワハラで深い心の傷を負い、そのスポーツ自体を、嫌いになって、辞めてしまう。
パワハラチームのほうが、強くない??!
パワハラを絵に描いたようなチームが時々ありますね。
- ミスがあると延々と怒鳴りつける
- 連帯責任という闇を用いて、「お前のせいで、みんな怒られている」という強迫を行う
- 練習中だけではなく、試合中も選手に怒鳴り続けることにより、選手を「将棋のコマ」のように動かそうとする
- 監督やコーチを「偉い」存在であると植え付け、上下関係を押し付ける指導
さて、パワハラチームのほうが、強くなりますでしょうかね・・・?
- ミスを怒鳴る ⇒ 選手はミスを恐れるため、チャレンジしない選手たちが育つ
- 連帯責任ばかり発動 ⇒ 選手たちは、仲間を「チームメート」として以上に「怒られたくないライバル」と認識するため、個人技の集合になりやすい
- 試合中「将棋のコマ」 ⇒ 常に怒鳴ってもらえるため、瞬時の状況判断能力を、選手たちは磨かない
- 監督やコーチへの上下関係押し付け ⇒ 先輩や監督・コーチの指導は常に正しい、と、疑わなくなり、質問もしなくなるため、「高みの追求」をしなくなる
- パワハラが充満したチーム ⇒ 選手たちが、学校で、「口コミ」で友達を誘いたいと思えないため、結果、選手が「減る一方」で、センスの高い選手が入らない、層が厚くならない
どうでしょうか。ここまでお読みになってもなお、「パワハラチームのほうが強い」というマヤカシのような神話を、信じたいでしょうか。
ビジネスでのパワハラはどうか?
私は、経営コンサルタントとして、10年ぐらい、企業様の業績改善のお供をしています。
時々、「パワハラ」「精神論」が色濃い企業様が、売上や営業利益を、一時的に伸ばすときがあります。
しかし、そういう企業様が3年後も、全く同じ組織で、同じ業績を維持していることは・・・実は1社たりとも、ありませんでした。
スポーツよりも、ビジネスのほうが、方法論ははっきりしているはずです。方法論さえ、パワハラでも何でも叩き込めば、売上も営業利益も伸ばせるはず、ですよね?
それでも、パワハラ企業は、必ず崩壊するんです。
皆さんも是非、声を上げてください
今回の記事で、皆様と問題意識を共有できたものと考えておりますので、どんどん、「令和流!小学生スポーツの指導者」とお薦めできるようなポジティブな活動を、情報発信していきたいと考えています!
同志となってくださる皆様もぜひ、Twitterのリプライなどで、声を上げていただければ幸いです。
執筆:田村恭佑
(人間関係メンター×弁理士×経営コンサル)
<神奈川県バスケットボール協会 2019年アンケート結果。個別回答の抜粋>
- 他のコーチがいても誰も助けてくれない
- 暴言がひどすぎる。他にも精神的苦痛を感じてミニバスに来れない人もいる
- 何をやってもコーチに怒鳴られる。練習に行ってもストレスでしかない
- 監督から子供達に対しての指導と言う名目の暴言が多すぎます。時代錯誤もいいところ
- 怒鳴って罵倒しまくれば子どもは言うことを聞く!という指導は大間違い
- 楽しめる所ではなかった。萎縮している。けなして追い込んで
- 具体的な指導をせずに自分の思い通りにならないと人格を否定するような発言
- 日常的に暴力暴言がありました。その監督をいまだにかばっている保護者がいます。ありえない事だと思います
- コーチのパワハラは酷いです。お願いです、助けてください
- 小学生に対して指導が厳しすぎる。中学はバスケをやりたくないとのこと