商標、知的財産、収益改善、人間関係の悩みにお応えします

NHKが『直虎』グッズを作ってもライセンス料?!

update

シェア ツイート



鈴木えりな

『先生!商標『直虎』が、NHKでも浜松市でも無い、無関係の母体(企業)によって商標取得され、しかも、異議申し立てが認められなかったみたいですよ!!』

たむきょん先生
『今朝の新聞にそのような記事がありましたね。ちなみに、、もう1度、事のいきさつを、簡単に振り返ってみてもらえませんか?』

鈴木えりな
『えっと、今回、NHKでも浜松市でも無い、全くの別の母体で”直虎”の商標を取得したのは2社でしたよね。1社は、長野の酒造メーカー。もう1社は、浜松市内のイベント会社なんですよね。それで、後者のイベント会社は、浜松市内で、ご当地の井伊直虎が大河ドラマになるに当たっての商品戦略などを、セミナーしたりもして、NHKから、”直虎”が大河ドラマになることの発表をした後に、商標を出願していたんでしたよね。
そして、、この2社とも、それぞれ商標登録を得たんですよね。
浜松市は、市内の業者などに、ご当地のお土産などの名称として”直虎”を使いやすくしてもらいたく考えていたので、こちらの2社の登録に対して、”異議申し立て”という制度を利用して、登録を見直してもらうよう、特許庁へ申請したんでしたよね。
でも、今朝の新聞では、その異議申し立てが、認められなかった、ということでした。』
(以前、当ブログでも、このニュースを記事にしていますので、参考までに ⇒『新大河ドラマ『直虎』をめぐる商標の争いについて』)

たむきょん先生
『少しずつ思い出して来ました。とにかく最近は忙しくて、、色んな商標の相談を受けていまして、直虎の商標の件、もうすっかり遠い記憶になってしまっていました。。』

鈴木えりな
『あらら、、お疲れ様です。大丈夫ですか?やっと少し花粉症が落ち着いてきた所で、今度はお仕事でお疲れ気味なんですね。』

たむきょん先生
『はい、、体力が無いですね、、。それで話を戻しますが、今朝の新聞では、特許庁の見解は、どのように書かれていたんでしょうか?』

鈴木えりな
『えっと、要約しますと・・・

・”直虎”が、全国で井伊直虎のことを表すと認知されているとは限らないこと
・例えば肥前小城藩の11代藩主”鍋島直虎”や、須坂藩13代藩主”堀直虎”が実在した
(実際、長野の酒造メーカーは、上記の”堀直虎”を想定して、命名しているそうです)

ということです』

たむきょん先生
『なるほど~。これは、難しい問題ですよね』

鈴木えりな
『なんとなく、納得いかないのですが、、先生はどんな見解を持っていますか?』

たむきょん先生
『2つの気持ちがありますね。正直言うと。まず、特許庁の言うことは、もっともだと思う点もあるということです。日本人の名前は、姓と名で構成されていますが、そのいずれか一方のみ、有名だからと言って、他社の登録を認めない、というのは、現在の商標法では、なかなか結論づけづらいように考えます。例えば、”ありふれた姓”(例:佐藤、鈴木、山田など?)や、歴史上有名な人物名、は、特許庁の審査基準上、登録を得られないことになっています(商標法3条1項4号と、4条1項7号)。しかし、姓・名で有名であっても、姓抜きで名のみ、でも登録を排除するような条項ではありません』

鈴木えりな
『え~。。。じゃあ、”信玄”とか、”幸村”とか、”信長”とかでも、やっぱり無関係の第三者が、商標登録できちゃうってことですか?』

たむきょん先生
『なるほど、そう来ましたか。いや、今挙げてくれた3人の名前は、すでにその名だけで、3人を特定できますよね。信玄という名の歴史上の人物が複数いる、とは言い逃れしづらいですよね。信長も幸村も。ですので、このぐらい、姓+名でなく、名だけでオンリー1であれば、おそらく4条1項7号(公序良俗違反)で登録は認められないと私は思います

鈴木えりな

『そっか、、つまり”直虎”だけでは、=井伊直虎、と日本中の人がすぐに考えるとは限らない、ということなんですね』

たむきょん先生
『そういうことです。ただね、2つの気持ちのうちもう1つとしては、じゃあ、大河ドラマの舞台である浜松市や制作元であるNHKが、”直虎”という名称を商品名にしようとした時に、一部の商品では、全くの他社へ、ライセンス料なんかを払わなければならない、という事態は、どうしても違和感ありますよね。商標は、50分類ぐらいあり、NHKや浜松市や、今回の2社が登録を得ているのは、まだまだそのうちの一部の分類のみです。ということは、この特許庁の判断を受けて、また、残りの数十分類について、”直虎”と商標登録を得られることになってしまいますよね。これは、違和感ありませんか

鈴木えりな
『先生!そういうことなんです!商標の制度上、たとえ、登録とせざるを得なくても、本来、この”直虎”という名称を活用すべき母体が、堂々と活用できない事態ということに、納得いかないのです!』

たむきょん先生
『えりなさんの気持ち、とても良く分かります。商標という、とても強い権利の取得を、推奨し、代理する立場ながら、今回は私自身も、モヤっとする事案です』

鈴木えりな
『今後、浜松市や、市内のお土産メーカーなどは、どういう対策を取ればいいのでしょうか?やっぱり・・・商標権を持った企業へのライセンス料を支払わなければならないのでしょうか・・』

たむきょん先生

『もし、私が、浜松市や市内の企業から直接、そのような相談を受けたら、”直虎”と二文字での商品化は、やはり、既存の商標権者の商標に抵触するため、”井伊直虎”とフルネームで記載をするか、更に、井伊直虎のみではなく、+αで独自の商品名も併記する、独自に、”直虎”のみとは非類似の商標を取得するなど、工夫するよう、ご助言すると思います』

鈴木えりな
『”井伊直虎”が、誰かの商標登録か、まで各企業は調べておく必要はあるんでしょうか?!』

たむきょん先生
『一応、商標法4条1項7号で、歴史上有名な人物名は登録を得られないという決まりがあるため(審査基準上)、”井伊直虎”の登録商標の有無を調べる必要までは無いと私は思いますよ^^』

鈴木えりな
『少し、安心してきました』

たむきょん先生

『前回のこの事案に関するブログでも言ったように記憶していますが、やっぱり、”他人に取られたらまずい商標を見極めて、早期に登録を目指すこと”、これが鉄則だとは思います。それぐらい、商標は強い権利です』

鈴木えりな
『分かりました!』

※ブログ監修の田村(弁理士)は、商標・著作権・不正競争防止法など、知的財産に関する小さな問題点でも相談に乗っておりますので、お気軽にこちらの当所サイトを覗いてください。

※当所の、商標サービスサイト⇒こちら

※冒頭の画像は、NHK『おんな城主直虎Webページ』より引用

end

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

シェア ツイート