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新大河ドラマ『直虎』をめぐる商標の争いについて

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『真田丸』いよいよ今週末で最終回ですね…。
今度は1月8日から『おんな城主 直虎』(NHK大河ドラマ)がスタートしますね。
そのことが発表されたのが昨年8月25日だったのですが、その前後に、『商標の取り合い』をめぐるバトルがあったのを、ご存じでしたでしょうか…
制作元のNHKが制作発表の前日に、商品化を予定するいくつかの分野で『おんな城主 直虎』について商標登録の出願をし、制作発表の数日後に静岡の広告会社でしょうか、『直虎』を、商標出願し、前者は登録を得るのは分かりますが、なんと、後者まで、登録を得てしまっているようです(登録第5846107号)

私も、昨日の以下の記事で、そのことを知りました。)(「直虎」商標登録に浜松市「取り消して」(中日新聞)
私なりの見解を以下に記載しておりますので、良かったらご一読ください。


鈴木えりな
中日新聞の記事は読んだんですが、イマイチ、どこに問題があるのか、分からなくって・・・汗

たむきょん先生
『そうかもしれないね。私も、読んだだけではよく分からず、色々と条文を読んだり、特許庁のデータベースで調べたりして、少しずつ理解できた感じだよ』

たむきょん先生
『まず、特許庁は、公平性を持って、審査の基準によって全ての商標登録の出願の案件を審査して、登録してもよいか、ダメか、を判断している、というのは間違いない事実だよね』

鈴木えりな
それは理解できます。そうでなきゃ困りますもん

たむきょん先生
『特許庁の審査官が、必ずしも”NHKの大河ドラマのタイトルに近いんだからこれは登録にできないでしょー”なんて、アバウトな観点で、審査をしているわけではないことを意味しているんだよ。私も代理人として、このような観点で審査をされてしまうと、お客様に迷惑がかかってしまうから困りますし』

鈴木えりな
じゃあ、審査の際に、大河ドラマの”おんな城主 直虎”が考慮されずに、広告会社による”直虎”がササっと登録になってしまうってことですか?!

たむきょん先生
『いいえ、そうでもなかったみたい。
同じ商品分野で、数日先に、NHKが”おんな城主 直虎”を出願しているからね。
”おんな城主”と”直虎”を分離してみたら、後発の”直虎”に対して、類似と判断される可能性は高いよね。
実際、特許庁の記録を見ると、”直虎”に対して”4条1項11号”の登録拒絶の理由が出されてる。これはおそらく”おんな城主 直虎”を考慮してだよね。』

鈴木えりな
え?じゃあ、登録にならないはずじゃないですか!

たむきょん先生
『ここからが多少、審査実情みたいなものが見え隠れするのかもしれないね。特許庁は、大局的に物を見て、審査をするのが仕事だと、それは私もそう思う。
だから、まず”おんな城主 直虎”に類似しているのでは、と登録拒絶の理由を出した。
だけど、広告会社さんはしっかりとした反論をしたんでしょうね。”おんな城主 直虎”と”直虎”は非類似だ、とね。
やっぱり大局的に物を見るのが審査官の仕事なので、”そういうことなら登録を認めてもいいでしょう”と登録を認めたんだと想像するよ』

 

鈴木えりな
えー、、でもそれって、本来はちょっとずる賢く、”今後、ブームが起こるかもしれないワードを先取り的に赤の他人が商標登録しちゃえ!”という行為を、助長してませんか??

たむきょん先生
『特許庁も、”この理由でなら、拒絶にする”という登録拒絶の理由のリストがはっきり決まっていて、それに照らして、登録拒絶の理由がなければ、登録にしなきゃいけない、ということになっているからね。今回の特許庁の判断は、(広告会社さんの意見書の内容を読むことまでは出来ていないけど)妥当なのかもしれないね』

鈴木えりな
じゃあ、このまま、直虎がブームになったとき、お土産品とかに”直虎”と付けたいときは、この広告会社さんに許諾を得たりお金を払ったりしないといけない、ってことでしょうか。これがもし許されるなら、私だって、次の大河ドラマが発表されたらすぐに、そのネーミングにちなんだ商標を取りたくなっちゃいます!!怒

たむきょん先生
『すごいね。そういう性格は私も似てるよ。
淡々と答えているけど、私も内心ではいつも正義感を持ってこの仕事をしているからね。
ここからが、私の見解ね。(あくまで私の)』

鈴木えりな
と言うと?!(ワクワク)

たむきょん先生
『まず、ネットを調べると、この広告会社さんね、”これから流行るであろう直虎にちなんだ、ビジネスセミナー”みたいのをやってるんだよね。開発商品発表会(2015年12月16日)。
そして、上記の中日新聞の記事で、浜松市や、浜松市商工会議所による、”直虎”登録に対する特許庁への異議申立てに、否定的なコメントを寄せていたのが、某大学の教職員なんだけど、同じく、この発表会で、連名で、その大学さんも発表しているんだよ。その教職員と広告会社さんとの実際の絡みは不明だけど。』

鈴木えりな
つまり、身内をかばってるかもしれないってこと?

たむきょん先生
『どうでしょうかね。私はそういう所までは分からないけど、少なくとも、これで、広告会社さんが、”おんな城主 直虎”のブランド力にあやかろうと商品開発していることはハッキリした事実だよね。異議申立ての審議で、こういう事情が勘案されるかどうか、だよね。
特許庁は、審査は画一的に行い、異議申し立てや無効審判で、利害関係者やその周辺の方々からの”異議”を受けて、審査/審判で、またしっかりと審理をすることになっているので、これで、公平な結論が出るんじゃないでしょうか。こういう”他人のブランド力にあやかった商標出願を排除する”趣旨の条文は、いくつかあります。おそらく、これらのどれかに基づいて、異議申立てがなされているんだと思います。』

鈴木えりな
時間がかかるって書いてありましたね(異議申立ての審理結果は、約1年間)。良い結果が出るといいですね。

たむきょん先生
『そうだね。私が最後に言いたいのは、”やっぱり、他人に取られたら困るネーミングは、ちゃんと事前に幅広く押さえておいたほうが良かったんじゃないか”ということです。”おんな城主 直虎”だけではなく、”直虎”でも、押さえておけばよかったよね。ちなみに、浜松市ではなく、NHKが権利者だから、どうせ浜松市は、お土産のネーミングに使いたい時は、NHKの許諾は必要なんだけどね。』

end

(画像は、http://www.chunichi.co.jp/より引用)

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

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