
こんにちは。
著作権・商標・知財契約を専門とする弁理士の田村(たむきょん)です。
著作権の法律が、改正される案が、国会に提出される、と新聞記事がありました。
早ければ、2020年からの施行を目指すようです。
ちまたでは、
『スクリーンショットも、著作権法の違反になるって?!』
と、若干、ザワついていますよね。
もう少し正確に、説明していきたいと思います。
※2019年3月12日に、この法改正が、延期となることが決定しました。その説明記事はこちら
今回の著作権法の一部改正(案)の要約
- 皆さんは、「違法にアップロードされた」と知っていて、その音楽や映像を、自分のためとはいえ、ダウンロードしただけで違法に当たるのは、ご存知ですか?
- また、6年前に、有料で販売されている音楽や映像の、違法アップロード版をダウンロードすると、”刑事罰”の対象に当たるようになったのは、ご存知でしたか?
(懲役2年以下か、罰金200万円以下か、その両方)
※映画の盗撮などは懲役10年以下か、罰金1000万円以下か、その両方)
- 今回は、今まで「音楽や映像(映画含む)」が対象だったのが、論文・ゲームソフト・コミック・小説・写真などのいわゆる海賊版のダウンロードも違法、となるそうです
- これも、「本来は有償で提供されている著作物」の海賊版のダウンロードに対しては、刑事罰も課されます
(映画以外は、懲役2年以下か、罰金200万円以下か、その両方)
- どうも、Twitterやfacebookなどで、海賊版のコミックや小説などを、スクリーンショットして保存するだけでも、”著作権法の違法”に該当する、ということなんです。
そもそも、何が問題だったのか?
『今回の改正は、どんな問題意識から、話し合いが始まったのでしょうか?』
『ニュースのもととなっている、文化庁の著作権分科会の報告書によると、以下が問題意識のようです。
- 例えば2017年に摘発された1つの海賊版サイトによる、著作権の被害額は1年間で700億円を超えた
- 主要4つの海賊版サイトへのアクセスは、半年で2億回を超えた
- 音楽や映画の海賊版だけではなく、学術論文やビジネスソフト、コミックなどの海賊版サイトの発足も深刻化している』
これまでも、違法に当たる行為は?
『たむきょんさんが、”要約”で書いてくれてますが、そもそも私、自分で見るためにダウンロードするだけでも違法って、知らなかったんですが・・・』
『映画館で映画を見ると、以下のようなCM、見たことあるかな?このCMで、映画は海賊版をダウンロードするだけでも違法、というのは、多少知れ渡ったかもしれませんね。

(『映画館に行こう』サイトより引用)』
『自分のためだけだったら、悪いこととは思えないのですが、何で、ダウンロードするだけでも、違法と言われてしまうのですか?』
『ひとえに、”海賊版サイト”の撲滅が、至上命題でしょうね。そのために、消費者が、”海賊版サイトというものは悪いものなんだ”という認識をし、そのサイトで、違法にアップロードされた映画なり音楽なりを、入手しようとしなければ、本当の著作権者の売上や収入の被害、というのは減る、という思想のもとだと考えます。
(大原則として、海賊版サイトを運営している行為も、そのサイトに、ユーザーとして海賊版の著作物をアップしてしまう行為も、当然、著作権法違反です(懲役10年以下か、罰金1000万円以下か、その両方)』
今回、どんな行為が”違法”として追加されるの?
『今回の改正、つまり来年から施行されるかもしれない著作権法の一部改正では、どのような違法アップロードが、新たに追加されるんですか?』
『前述したとおり、音楽や映画だけに留まらず、被害が深刻化している、ということから、以下全て、違法アップロードと知りながらダウンロードするだけでも、違法となりました
- 学術論文
- ゲームソフト
- ビジネスソフト(Adobe製品など)
- コミック・イラスト
- 書籍・雑誌
- 著作物に当たる写真
(少なくとも上記は含まれます。他にもあるかもしれません)』
『ダウンロードと、スクリーンショットは、どう考えたらいいのでしょうか?』
『まず、ダウンロードできるサイトであれば、ダウンロードする行為が、違法、ということになりますよね?
一方、ダウンロードできないようなサイト、もしくは、文脈全体で保存したいような場合、あるいは、めんどくさい場合、これらについては、
”(違法アップロードと知りながら)スクリーンショットをしてしまう”
行為だけでも、違法に当たる、ということです。
注意が必要なのは、もし、そのスクリーンショットした、またはダウンロードした違法アップロードのものの原典、オリジナルが、”有料で販売されているもの”である場合、刑事罰の対象にまでなってしまう、ということです
(映画以外であれば、懲役2年以下、または罰金200万円以下、またはその両方)』
私たちは、どう気を付けたらいい?
『なんとなく、SNSやその他のネットを利用するのが、怖くなってしまう私がいるのですが・・』
『これまでの人生で、”悪いことに手を染めることになるか、それともクリーンか”というのは、”嗅覚”で、かぎ分けていたのではないでしょうか。
普通のモラルの物差しさえ持っていれば、きっと、今まで通りの行為で、問題ないと思いますよ(o’∀’)b』
『具体的には、どういう場合は気を付けたほうがいいですか?』
『私は、弁理士なので、実は、違法にアップロードされたサイトや、twitterやfacebookの投稿を見ると、すぐに分かりますし、すぐに、非表示にします。こういう姿勢を心がけていると、気づいたら、違法なものに気付く嗅覚が、備わるかもしれませんね!
例えば、以下のようなものを目にした場合、ダウンロードやスクリーンショット以前に、そのサイトからすぐに出るとか、その投稿はさっと非表示にする、とかでしょうか。
- まとめサイトや個人ブログ、2chなどからリンクされた、ダウンロードサイト、音楽、映像サイトに入ってしまった
- twitterで、漫画の作家さん以外のかたが、コミックの一部を投稿に含めている(フリーコンテンツもありますが、律儀にそういうものを使っているかたは、、まれでしょう)
- ”自社が掲載された!”などと、新聞や雑誌を、上手に写真を撮って、twitterやfacebookで、アピールしてしまっている
- そもそも、ネット小説やネットコミックなどにおいて、”有名な閲覧サイト”以外のサイトで、共有されているもの
※以前のこちらの記事『著作権の侵害行為ワースト3[Twitter,facebook編]』は、著作物のSNSにおける違法行為をまとめているので、参考になるかもしれません』
弁理士 田村としての見解
『素人の直感だと、
”あまり厳罰化すると、著作物の利用者も、萎縮してしまい、結果、著作権の発展の妨げになるんじゃないか?”
と思ってしまったりしますが、たむきょんさんは弁理士として、どうお感じですか?』
『先に紹介した著作権分科会の報告書を読むと、やはり、ネット利用の萎縮については、検討されたようです。ただ、6年前に、”有料の音楽・映像の、その海賊版のダウンロードだけで刑事罰”という改正をして、この6年間で、ネットやSNS利用者は増加している一方で、委縮は見られていないそうです。
海賊版サイトは後を絶たないようで・・とにかく、個人個人であっても、総合的に見れば、”海賊版を拡散させてしまう”効果を発揮する可能性もありますので、まずは、厳罰化することに踏み切ったそうです。
そして、ネット利用や著作物利用への萎縮が見られたときに、また緩和を検討すればいい、という立場に立っていますね。
これ自体は、致し方ないのかな、と私は思います。』
『なるほど・・・!』
『私の意見を求めてくれるなら、、以下は、私の想いです。
- 日本は国土の狭い国。物質的な資源に頼れないから、”知的財産”をずっと重視してきている。どうか、日本国民全員で、その知的財産に関するモラルを、高めていきましょう!そしたら本来は、必要なかった改正なわけですから。
- 利用や購入してくれる人あっての著作物です。だから利用者は非常に大切です。
でも、”オリジナル”、最初のその著作物を作ってくれる作家さんたちが、居なかったら、私たちは、すでにあるものだけを、楽しまなきゃいけない。やっぱり、最初に作ってくれる作家さんを、みんなで応援していきましょう!そこに、お金の価値をしっかり感じられる人になりましょう!』