
「サブスクリプション」。
この言葉をよく耳にするかたは多いのではないでしょうか?
「定期購読」
というような意味合いですね。
アマゾンプライムによる映画見放題、楽天TV、日経電子版などを挙げれば、「ああ、ああいうのね」とほとんどの方がご理解いただけるのではないでしょうか。
雑誌も今や、コンビニや書店で買って読む、という時代から、電子書籍として、タブレットやスマートフォン、パソコンで見る時代になりました。
さて、今日の私の問題意識は、
『飲食店のお客さん向けに、iPadで、定期購読中の電子雑誌を読んでもらう行為は、果たして、セーフか?アウトか?』
というものです。
一般論で考えるよりも、こうなったら・・・
電子雑誌の定期購読をサービスにする、大手5誌の利用規約を調べて、白か黒かハッキリさせよう!
ということで、調べてみました。
弁理士としての予想は?
『そもそも、飲食店や床屋さんに、よく、待ち時間の緩和のために、電子書籍ではなく実物の雑誌やコミックが置いてあること、昔からよくありますよね?
あれは、著作権上、問題ないのでしょうか?それとも、グレイゾーン・・?』
『文化庁の見解では、飲食店や床屋のお客さんのために、店主が購入した雑誌やコミックなどを読ませてあげる行為は、著作権の侵害に当たらないそうです。
その理由をまとめると以下になるのではないかと考えます。
- 店外には持ち出さず、拡散性が低いため
- 短い時間であり、損失は発生しないであろうため
- 飲食店などでお客さんに読ませる行為は、一般的に行われる行為。その都度、著作権者の許諾を要するのは、現実的ではないため
※この点、音楽の著作物は、JASRACが一括で管理をし、飲食店などで、アーティストのCDを流そうものなら、監視員みたいな人が巡回していて、JASRACへの支払いを要求してくるそうですよ』
『それなら、実物の雑誌が、iPadなどで読む電子版に切り替わっただけなので、きっと問題ないですよね?』
『私は、直感的には、”紙媒体ではなく、電子版なわけだし、紙媒体以上に拡散する可能性が高まるから、紙媒体の雑誌と同じようには扱えないのではないか?”とまずは考えたんです。
著作権法や経過措置などで、カバーされていない対象物です。
こういう場合は、”権利者と利用者との契約内容”が全てかと存じます。
そこで・・電子雑誌の大手5誌の、”利用規約”が、権利者と利用者の間の契約に当たるので、これを読んでみました。
以下、解説します。
※記事の読みやすさの関係で、1誌1誌、非常にシンプルに解説させていただきます』
楽天マガジン
250誌以上 380円~/月
https://magazine.rakuten.co.jp/
利用規約には、
『私的に利用することを目的としてのみOK』
である旨が明記。従って、飲食店や床屋でお客さんに読ませる行為は、NG
タブホ
900誌以上 500円~/月
https://tabuho-portal.optim.co.jp/
利用規約には、
『第三者に再許諾することを禁止』
である旨が明記。従って、飲食店や床屋でお客さんに読ませる行為は、NG
ブック放題
ソフトバンク系。200誌以上 540円~/月
https://bookhodai.jp/
利用規約には、
『商業目的で不特定多数の者に閲覧・利用させる行為は禁止』
である旨が明記。
従って、文面だけを読むと、ほんの少数のお客さんに、その読ませることについて課金をするようなことをしなければ、飲食店や床屋でお客さんに読ませてもOKと解釈
dマガジン
ドコモ系。200誌以上 432円~/月
https://magazine.dmkt-sp.jp/
利用規約には、
『コンテンツを、個人的かつ非営利目的に限り利用可』
である旨が明記。従って、飲食店や床屋でお客さんに読ませる行為は、NG
マガジン☆WALKER
コミック60万点以上 540円~/月
https://bookwalker.jp/
利用規約には、
『自己のアカウントを自ら管理し、使用するものとし、第三者にこれを使用させない』
旨が明記。従って、飲食店や床屋でお客さんに読ませる行為は、NG
まとめ
5誌の利用規約では、”ブック放題”以外は、やはり、契約者以外のかたに、そのアプリの入ったタブレットを渡して読んでもらうような行為は、NGのようです。(ブック放題も利用規約だけからの解釈のため、実際は問合せをしてみないと分かりません。)
今後、時代が完全に、紙媒体から電子書籍へ移行したような場合では、飲食店や床屋で、お客さんに読んでもらう雑誌が電子版であることは、当たり前になっていくかもしれません。
むしろ、各誌が、「契約者だけではなく、店舗での利用も可」という法人向けオプションを充実させることで、他誌と差別化を図ろうとする日も、遠くない未来に、来るのかもしれません。
私個人としては、、
『有意義な著作物は、広く多くの人に触れてもらってこそ、文化の発展に貢献できる。
著作者・著作権者にしっかりと還元をした上で、模倣やその他の悪用だけをしっかり防いでいれば、利用シーンはあまり制限しないほうがいいのではないか』
という考えを、いつでも変わらずに持っています。
執筆:
田村恭佑
(弁理士×経営コンサルタント×認知心理学)