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連載(5) 大学教職員向け THE 産学連携!『大学が”オリジナル商品”を作る時の注意点』

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大学・研究所の研究者のかたや産学連携を担当する事務のかたを対象として、『大学の方針の違いがあっても、共通する原理』に値するような情報発信を、連載で行ってまいります。
今回は第5回目、『大学が"オリジナル商品"を作る時の注意点』についてです。

私は、約5年間、知的財産と産学連携のマネジメントを大学&研究所の中で担当させていただき、その後、弁理士事務所を経営し、5年経ちます。

大学は、その大学の産学連携の方針や”温度”がマチマチなため、なかなか、情報交換をしあって、適切な産学連携の推進ができる、というわけではない、特有の苦労があります。

そこで、多くの大学様の産学連携の推進のサポートをさせていただいている経験から、少しでも、

『大学の方針の違いがあっても、共通する原理』に値するような情報発信

をできたらと考えています。

『大学教職員向け THE 産学連携!』連載第5回目です。今回は、

『大学がオリジナル商品を作る時の注意点』

です。

(第1回 『収入や研究費は得られるか自問を』 こちら

 第2回 『産学連携の課は”警察犬”にならないようにしたい』 こちら

 第3回 『”URA”が活躍する王道』 こちら

 第4回 『発明や特許と、収入の関係』 こちら

※なお、私の記事で「大学」と言った場合、研究所、研究機関も含んだ考え方とします。

 

どういう目的で”オリジナル商品”を作りますか?

私大・県立大・国立大のオリジナルグッズ例

専修大学の例
(2019年,専修大学 購買会ホームページより引用)

愛知県立大学の例
(2019年,愛知県立大学 周年記念特設サイトより引用)

横浜国立大学の例
(2019年,横浜国立大学オリジナルグランドグッズ ホームページより引用)

『もともと大手私大は、大学名を入れたボールペンなど、オリジナルグッズを販売していましたよね。

でも、最近、国立大学や県立大学でも、オリジナルグッズを販売し始めているようです。むしろ、国立大学は精力的に活動しているように見えます。』

『そのようですね。各大学は、おおよそ以下を目的・意義として、オリジナル商品を販売されていると私には見受けられます。』

  1. 自大学を高校生や近隣のかたに身近に感じてもらいたい。認知向上の目的
  2. 周年イベントなどをきっかけとした、期間限定プロジェクトの一環として
  3. 大学の産学連携活動の分かりやすい成果として
  4. 大学の研究成果を商品化することで、研究力のアピールのため

 

『なるほど。つまり、”他大学もオリジナル商品を作っているから、何となくやってみたい”という軽い目的では、よくない、ということでしょうか・・?』

『私はそれはよくないと思います。

なぜなら、本来、1度始めた商品販売などは、よほど”期間限定”をはっきり謳っていない限りは、3~5年間は継続したほうがいいからです。そうすることで、やっと商品が人々に認知され、オリジナル商品で目指したいことに近づいていきます。

最初に、”なんとなく”で見切り発車してしまうと、最初の売り出しは勢いでスタートできても、2年目や3年目、予算を設定するにも、学内の理解や応援が得られなくなって、”たいして売れてないじゃないか”などの議論になり、1年で頓挫してしまうことがよくあることです。

だから、オリジナル商品を販売する際は、

どういう目的でオリジナル商品をスタートしたいのか?
という目的意識を、はっきり最初に設定し、学内でコンセンサスを取ること

が大切かと存じます。』

 

 

大学はオリジナル商品を販売して収益を上げることは出来る?

『あの、以前、大学は、”国立大学法人法”で商品販売で利益をあげる事業をしてはいけないと聴いたことがあるんですが、最近はOKになった、ということなんでしょうか?』

『いいえ。”国立大学法人法”の第22条に、”大学が行ってもよい事業、が列記されていて、基本的には、そこに入らない事業は、してはいけないというのは現在も変わりません。
この列記を改めて見ても、”商品販売により利益を上げること”というのは入っていないので、

現在でも変わらず、大学は、商品販売により利益を上げるような事業は出来ない

と考えられます。』

 

『それなら、国立大も県立大も私大も、どのようにして、オリジナル商品の販売を可能にしているんでしょうか?』

『念のため、精力的にオリジナル商品を行っている国立大学の、収支報告書を確認しました。やはり、商品販売による利益、という名目は記載がありませんでした。

そうすると、各大学は、例えば以下のような方法で、オリジナル商品を販売できているのだと考えられます。

  1. アイデアや企画を大学側で出し、商品化や仕入れ、販売を”大学生協”その他の大学にとって委託しやすい”パートナー業者”にお願いしている
  2. 大学の知的財産に基づくものであれば、”ライセンス”という形で、他企業に商品化を許可している
  3. 売上げを目的とせずに、学内予算で”配布ノベルティ”という位置づけで、オリジナル商品を自費制作している

上記いずれかであれば、大学がオリジナル商品を企画・制作できると言えます。(その上で、収益が得られる場合と得られない場合とは区別されます。1と3はNG、2はライセンス収入であればOK)』

 

 

“オリジナル商品”を企画してから商品化までの流れ

『要するに、大学はオリジナル商品を企画・販売など出来る、ということですね!!
でも、そもそも、まさにこれから、オリジナル商品を企画・販売していきたい、というスタートラインの場合、いったいどういう流れで、商品販売まで持っていくのでしょうか?』

『上記の例でいくと、「1」のケースが一番多いのではないかと考えられるので、1の場合で、おおよその流れを以下に説明します』

  1. 【アイデアの起案】
    多くの場合、起案は、広報部門。”広報の目的でこういう商品を作りたい”というアイデアが生まれる
    (研究室や教員が起案した場合、広報部門に協力を仰ぐことがスタートと考えられる)
  2. 【予算の確保・学内調整】
    大学生協やその他出入りのパートナー業者に製造・販売を委託するにしても、大学としての持ち出し(出費)は少なからずある
    そこで、広報目的であれば広報部門が主導となって、費用概算を見積もり、そのオリジナル商品がもたらすメリット・デメリット・リスク、などをプレゼンテーション資料にまとめ、学内の予算確保に向けて調整。この時、事務方のみで企画を進めず協力をしてくれる教員も参画いただくと話が進みやすい
  3. 【パートナー業者への打診】
    もっとも重要なプロセス。協力的で柔軟なパートナー業者を見つけると、その後も、話が進みやすく、また、何年も継続しやすくなる。ざっと大学を調査すると、大学生協を選出している大学は多い。生協側の、そのようなニーズが高まっている昨今、受け入れをしやすい体制が整っている可能性あり
  4. 【試作品の制作】
    2番目に重要なプロセス。ただ単純に試作品の制作に意味があるのではなく、製造業者の選定を主目的にしている。大学生協が主導の場合、お抱えの製造業者がある可能性が高いので、選定しやすい可能性あり
  5. 【必要な合意書または契約を締結】
    パートナー業者と製造業者がほぼ決まった段階で、大学・パートナー業者・製造業者のそれぞれの役割や、やってはいけない行為、などを合意書や契約書といった形でまとめ、締結をしておくとよい。のちのちの当事者の”トーンダウン”によるトラブル回避に繋がる
  6. 【商品のパッケージデザイン策定】
    教育の一環でオリジナル商品の企画を行う場合、学生さんに参画してもらうと、喜んでデザインなどを担ってくれる可能性あり。ただし、その場合、デザインの”著作権”の帰属などについて、学生さんと大学とで、覚書を締結することを強く推奨(のちのちトラブルになりやすい)
  7. 【初期納品ロット数・販売時期の策定】
    6と並行して、一番リスクを負う役割となる”パートナー業者”を中心として、売価・最初の納品個数・販売ルート・販売時期などを策定。あまり大学は口出しをし過ぎないこと
  8. 【Webページやパンフレット作成】
    Web通販まではもちろん不要だが、大学がオリジナル商品を企画・販売している、ということを宣伝するためのWebページを設けることが一般的(プレスリリースを行う大学もある)。1ページの簡潔なものでよい
  9. 【初期納品・販売開始へ】
    学生さんが参画しているような場合、展示会や学園祭などのイベント時に、負担でない範囲で学生さんに売り子を担ってもらうケースもある。恒常的なボランティアではなく時期限定の手伝いであれば喜んで手伝ってくれる可能性は高い
  10. 【翌年度に企画を継続するための振り返りと学内調整】
    3番目に重要なプロセス。打上花火のように、とりあえず時限的にオリジナル商品を制作することはできるが、2年、3年と企画をブラッシュアップさせながら継続させることが難しく、そうすることで認知が高まり、広報などの効果が認められるようになる

 

“オリジナル商品”で起こりやすい問題と対策

『実際にオリジナル商品の企画・販売を行ったとき、どういう問題が起こるのでしょうか?』

『上記の1から10のプロセスのうち、起こりやすい問題と、それへの対策を以下にまとめます。大原則として以下のことを念頭に置いておくといいでしょう。

大学が発注者かどうか、で、大学のイニシアティブの取りやすさは大きく変わる

[起こりやすい問題と、それへの対策]

  1. 【アイデアの起案】
    半年ぐらいして、空中分解することもしばしば(温度が冷めてしまったり)
    ⇒⇒最後まで企画を責任持って進めるのはだれか、どの部門か、を最初に明確にする
  2. 【予算の確保・学内調整】
    前述の通り、大学が何かしらの発注をするかしないか、でイニシアティブの取りやすさは変わる。
    ⇒⇒⇒そう考えると学内予算を最低限確保して進めたほうがいい
  3. 【パートナー業者への打診】
    ルートをすでに持っているから、話が早いから、付き合いがあるから、というだけで”パートナー業者”を安直に決めないほうがよい
    ⇒⇒⇒ビジネスとして考えることはもちろんであるが、筋書きのない企画に”協力”をしてくれる所かどうか、で選定する
  4. 【試作品の制作】
    製造業者にとって、試作品の制作は、受注の第一歩なので、ムゲにはされにくいが・・・
    ⇒⇒⇒小ロットでも製造してくれるか、試作品制作に費用は発生するか、など、業者として付き合えるかどうかを事前に図るとよい
  5. 【必要な合意書または契約を締結】
    大学が発注者である場合は、売買契約に値するものを締結しやすい。しかし、発注者でなく、”監修”的な立場である場合、注意が必要
    ⇒⇒⇒ある種の「共同研究開発契約」のような、ゴールが定まっていないが役割分担を最後まで担いましょう、という契約を締結することは非常に大切
  6. 【商品のパッケージデザイン策定】
    パッケージデザインを誰が作り、その権利はどこに帰属するのか。また、パッケージデザインに大学名を入れた場合、製造責任のような位置づけになってしまわないか
    ⇒⇒⇒著作権の帰属について、制作者と明確に契約する。そして、品質の保証は一切大学は行わない、という点をパートナー業者と契約すること
  7. 【初期納品ロット数・販売時期の策定】
    ここまで来ると大学はあまり口出しし過ぎる必要はない。パートナー業者がビジネスとして成立するかどうか、で初期納品ロットなどを決定してもらえばいい
    ⇒⇒⇒販売時期について希望がある場合は、3や4のプロセスの時に早め早めに時期の合意を取っておくとよい(多くの場合、押せ押せになるため)
  8. 【Webページやパンフレット作成】
    今後、ことあるごとにWebページであれば更新が発生する可能性がある。制作を業者に委託する場合、その都度費用が発生することを念頭に
    ⇒⇒⇒柔軟で迅速に動いてくれる人にWebページやパンフレットは依頼をしたほうがいい。来年以降のことも考えて
  9. 【初期納品・販売開始へ】
    学生さんに手伝ってもらう場合、いざ当日を迎えたけど来ない。また別の問題として、いくつ売れているのか、分からない。
    ⇒⇒⇒謝金を出すかどうか、など決めておく。また、販売個数の報告などを定期的に行ってもらうよう、事前に約束しておくとよい
  10. 【翌年度に企画を継続するための振り返りと学内調整】
    担当者の異動、協力的な学生さんの卒業、教員の役割転換、などで1年で頓挫してしまうことも
    ⇒⇒⇒1年目は、”スキームづくり”と捉え、早々から、次年度以降に継続できるための”スキーム”の明確化を行っていく

 

 

(もし、お読みになった大学のかたで、“オリジナル商品”企画を検討中です、という大学様がいらっしゃったら、柔軟にご支援いたします。)

 

執筆:田村恭佑
(認知心理学×弁理士×経営コンサル)

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、収益改善・組織作り、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

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