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「社名」は商標登録すべき??

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鈴木えりな

『先生!友達が、昨年末に法人設立したのですが、その会社名を商標登録するべきか、心配してるんですが・・・』

たむきょん先生
『そうですか、いつもえりなさんのお友達は”商標”への感度(アンテナ)が高いですね!』

鈴木えりな
『私からいつもいつも商標の話を聞かされてるから・・・(笑)』

たむきょん先生
『そんなに日常会話で商標の話って出て来ないですけどね・・
えっと、”会社名を商標登録すべきか”というのは、弁理士の仕事をしていると、よくされる質問ですよ☆』

鈴木えりな
『そうなんですね!私は・・・せっかくこだわりの命名を自分の会社にしたのなら、商標登録も考えたほうがいいんじゃないかな~とは直感的に思うんですが・・』

たむきょん先生
『う~ん、そうだよね、、えりなさんや私は、商標といつも携わっているから、やっぱりそう考えるのかもしれないね。
ただ・・・法人設立って私も何年か前に実際に経験したけど、ただ書類を提出するだけ、なのに、色々とお金がかかるタイミングだよね。20万円ぐらいでしょうか・・』

鈴木えりな
『えっ!?そうなんですか?よく、”0円起業”なんて言葉を耳にしますが、やっぱりそれぐらいお金がかかるんですね、それなら、商標も取ったほうがいい、なんて安直には考えづらいですね』

たむきょん先生
『そうだね。私の所にご依頼いただいた場合はだいたい総額7万円で1件の商標が取れちゃいますが、それでも、本当に必要なものを商標にして欲しいもんだよね』

鈴木えりな
『で、どういう時に、社名を商標登録すべきなんでしょうか?』

たむきょん先生
会社名と商標について、以下にまとめてみたよ!参考にしてね!』

【1】商号は、全国に何十社も重複して誕生する可能性があるもの

法人設立の申請を管轄するのは法務局でしょうか、そこが「同様の事業で、同じ商号が存在しないか」をチェックするのは、あくまで同一市町村内です。
従って、例えば株式会社ABCという不動産会社が八王子市に存在しても、立川市で、不動産会社として株式会社ABCを法人設立することが可能、ということになります。

【2】社名を商標登録していても、類似する会社名を他社は使い続けることができる?!

会社名というのは、例えば、「長嶋茂雄」というフルネームが「自己の氏名」であるのに似ていて、「株式会社ABC」というのは、商標法上では「自己の名称」に当たり、たとえ、同業種(不動産業にしましょうか)で、八王子市の企業が「株式会社ABC」で商標登録をしていても、立川市の株式会社ABCが、商号を変えなければいけない、ということではなく、社名を普通に用いられる方法で使用する限りは、その登録商標「株式会社ABC」に基づく商標権の侵害には当たらないことになっています(商標法26条)。これは、商号という制度と商標という制度の住み分け的な考え方に基づいていて、「誰かがその社名を商標登録したから、いきない、社名が使えなくなる、という予期せぬ不利益を防ぐ」ための、商標制度なりの救済措置だと言えます。

【3】ただし、社名を商標登録することにも、他社をけん制する重要な効力はある

前述の、「普通に用いられる方法」で自己の社名を表示している限りは、他社が、「株式会社ABC」を商標登録していても、商標権侵害には当たらない、と書きましたが、どういう使用(表示)方法が、「普通に用いられる方法」か、というと、例えば、会社パンフレットの最終ページに、企業概要の欄を設けて、社名を記載したり、プレスリリースの冒頭に社名を記載したり、そういう、「商標として」「ブランド表示として」ではなく、あくまで、企業が何かを発信するような際に、当然のように社名を記載したり、表示したりするようなケースでは、その行為自体は、「普通に用いられる方法」と言えて、商標権侵害には当たらない、ということになります。
ただし、例えば、自社のWebサイトの冒頭などに、ロゴマークとして「株式会社ABC」と入れるような行為は、あくまで「ブランド表示として」「商標として」社名を表示していることになるので、こういう行為は、その名称を登録商標としている企業の商標権の侵害に該当する可能性があります。つまり、商標権者は、社名を登録商標としたら、他社の「ブランド表示として」の社名使用を防ぐことはできる、ということになります。

【4】電通のホームページを例に・・

電通ウェブサイトより引用)

オレンジの☆の箇所は、社名であっても、「商標としての使用」に当たります。
青い☆の箇所は、「普通に用いられる方法」で社名を表示しているにすぎません。

【5】社名をブランド名としても使用する企業は商標取得も検討を

例えば、「イタリアンレストラン」を経営する、「株式会社レッツイタリアン」があったとします。店名が「ビコーズイタリアン」などであれば、私は社名以上に、店名の商標取得をオススメします。
一方で、店名も「レッツイタリアン」であれば、やはり、社名であり店名でもある「レッツイタリアン」(使い勝手の良さから、株式会社を含ませない形をオススメすると思います)の商標取得をオススメします。
(※本来は店名(屋号)も「自己の名称」に該当しえますが、その飲食店名を「普通に用いられる方法で」のみ使用し続けるというのは難しいと考えますので・・・)
また別の例では、「杉並タマワン株式会社」という、杉並区の高級マンションを中心に販売する不動産会社が、Webサイト名としても「杉並タワマン」などを使用しているようなケースなら、やはり商標取得をオススメします。
一方で、Webサイト名(サービス名)は、「杉並に住むドットコム」などとして、社名はあくまで「会社概要」に表示する程度の使い方であれば、「杉並タワマン」ではなく、サービス名である「杉並に住むドットコム」の商標取得をオススメします。
(※これらの名称が、特許庁による審査の上で、取得可能であるか、はまた別の話です・・)

【6】防衛という観点からの「社名」の商標取得

さて、例えば、私、たむきょんは、「みぎのうで知財事務所」を屋号として弁理士事務所を、また「みぎのうで株式会社」を社名としてコンサルティング会社を経営しています。この「みぎのうで」というのを、(センスは置いておいて・・)統一したブランド名称としているのですが、この名称を決定した数日後には、やはり「商標出願」を行いました。今では登録商標です。
それは何故かと言うと、
『屋号や社名(自己の名称)を普通に用いられる方法のみで、ずっと使用するとは限らない』ということと、
『万が一、他社が、”みぎのうで”という登録商標を先に同分野で取得してしまった場合、こちらの”みぎのうで”というブランド名の使用の仕方次第では、いつでも権利行使をされる可能性がある』ということを考えてでした。
やはり、もし、お気に入りの会社名、または屋号が見つかり、さっそく使い始めていたら、それを、「サービス名称」や「商品名」としては現に使用していなくても、社名や屋号を「サービス名」や「ブランド」としても活用する可能性があれば、他社に取られてしまう前に、商標取得を検討することも一策だと私は考えます。

鈴木えりな
『よく理解できました。悩んでいる友達にも、法人設立=商標取得とは考えなくてもいいことを伝えて、また、商標にすることの利点もあることを説明してきます!ありがとうございました』

end

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

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