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「寄居とろとろナス」はどうして図案で商標登録されたのか?

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こんにちは!弁理士の田村です! 昨日、読売新聞で、「寄居とろとろナス」という商標が、登録となった旨の記事がありました(こちら) すぐに登録情報を確認し、気になった点があるので、そのことについて、記事にいたします。 &nb...

こんにちは!弁理士の田村です!

昨日、読売新聞で、「寄居とろとろナス」という商標が、登録となった旨の記事がありました(こちら

すぐに登録情報を確認し、気になった点があるので、そのことについて、記事にいたします。

 

どうして”図案化”して商標登録をしたのか?

 

商標登録寄居とろとろナス

「寄居とろとろナス」の登録情報(J-PlatPatより)

『可愛らしいですが、”寄居とろとろナス”の名称ではなく、”図案(ロゴ)”で商標登録をしたのですね。』

『そのようですね!もし、私がお客様から”寄居とろとろナス”で商標登録を目指したい、とご相談いただいたら、やっぱり、図案化(ロゴ化)をお薦めするとは思います』

『どうしてですか?名称として商標登録をしたほうが、その後、使い勝手が良さそうな気がしますが・・・』

『ほんとにその通りですね。できれば、名称として取りたいものです。

しかし、”寄居とろとろナス”という名称を聞いて、一般的には、”寄居で採れる、トロトロ食感の茄子”とストレートに想起できますし、きっとすでに寄居では、いくつかの農家さんが実際にその名称で、ナスを栽培・販売しているんでしょうね。

このような場合、”寄居とろとろナス”を、特定の個人や法人に、登録商標として認めることはできない、というのが商標の制度なんです。
(商標法 3条1項3号 の規定)

しかし、”寄居とろとろナス”が、名称としては、商標登録できないものであっても、図案化(ロゴ化)することで、3条1項3号は適用されないことになっています。

そういう理由から、”寄居とろとろナス”も、図案化の上で、商標登録されたのでしょうね』

 

図案化した場合のデメリットは?

『理由は分かりました。
ですが、このような図案化では、その図案そのままで名称を使う行為だけが、登録商標の利用、ということになるんですよね?』

『その通りです。だから、今回、権利者は、”寄居町”のようですが、”寄居町”は、認可する事業所の茄子の箱などに、このマークそのものを表示して、出荷するように、条件を出すのでしょうね。以下のようなイメージです。』

 

例えば、これに目を付けた寄居のナス農家さんが、”寄居とろ茄子”と、ちょっと名称を変えて、図案(ロゴ)も少し変えて、勝手に商標登録をしてしまう可能性は、、、ないのでしょうか?』

『するどい質問ですが、その可能性はあります。日本は平和な国ですが、私のような仕事をしていると、そういう悪どいかたは、本当に存在するんです。

ですので、今回、可愛らしくも、とてもユニークな図案(ロゴ)で商標登録を得ていますが、少しでもロゴマークや、名称をアレンジされた場合、権利行使も難しく、並列して登録商標となってしまう、というデメリットが存在するわけです。

なぜなら、そもそも名称”寄居とろとろナス”は、誰も登録を得られず、権利者となる寄居町も、その名称のみをもって権利行使できないからです)』

 

3年後の具体的な”使い道”を計画することが大切

『それでは、商標の取得を検討するにあたって、寄居町は、どうすることが良かったのでしょうか・・?』

『私が、商標の依頼をいただいた時、必ずお客様と明確にすり合わせするのが以下です(重要)

  1. どうして商標を取ろうと思いましたか?
  2. 取らなかったら、どういうリスクを想像していますか?
  3. 3年後の、具体的な、商標の”使い道”で最も確率の高いもの1つ、教えてください

『どうして、3年後の”使い道”が大切なのですか?』

『例えば、”ライセンスを有料で与えて品質のコントロールも図っていきたい”という使い道であれば、限りなく名称のみの状態で、商標登録を得たほうが、使い道にはふさわしいんです。

一方、例えば”自分たちだけが商標を使う。3年後も、他人から、「その商品名の使用を止めてくれ」、と言われなければそれでいい”ということであれば、今の使用のロゴマーク込みで、ロゴ+名称そのものを、商標として取ればいいですね。

このように、将来の最も想定される使い道次第で、商標の取り方は変わってきます

 

地域ブランドを”名称のみ”で商標登録する方法はないの?

今治タオル、って聞いたことあるのですが、これは、やっぱり図案として商標登録をされているのでしょうか?
そうすると、品質の悪い業者さんも、”今治タオル”という商品名を付けることができるということですよね・・』

『いいえ(^∀^)
”今治タオル”は、名称として、今治タオル工業組合という団体が、商標登録を得ているんですよ!

これを、”地域 団体 商標“と言います』

『どうして、”地域 団体 商標”だと、図案(ロゴ)にしないで、名称での商標登録が認められるんですか?!』

日本が国をあげて、”地域ブランド”を盛り上げるために作った制度なんですよ♪
でも、1つのメーカーや1つの農家が勝手にこれを取ることは出来ません。今治タオル工業組合、というように、しかるべき(公的な)団体でなければ、登録を得ることはできません。

加えて、ある程度、その団体の使用する名称として、地域に認知されていることも条件となります。
(地域 団体 商標の詳しい内容はこちら)』

 

自力で申請するよりも、弁理士を利用する意義

『寄居町は、登録となって喜んでいると読売新聞の記事にはありましたが、たむきょんさんは、最適な取り方だったかどうか、少し疑問を持っていますよね?』

『商標は、100点というのはありませんね。
3年後なんて、誰も分かりませんから。
むしろ、商標は、使い始めるもっと前に、計画の時点で、申請をし、登録してもらえるかどうか、の結果を得ておいたほうがいい、というのが、私や、多くの弁理士に共通する考えです。

今回、まず、とっても独特な図案で商標登録されていましたから、私はすぐに、”代理人はいたのか?”と疑います。

そうすると、代理人(弁理士)によらずに、寄居町は自力で商標を申請していました。

その情報を見ると、”もうちょっと、私なら、して差し上げられることはあったのに・・”と、憂いたりするわけです』

自力で商標の申請をせずに、弁理士に相談・依頼することの意義は、どういう点なのでしょうか?』

『以下は、今回の登録情報を見て、実際に感じた点です。それがそのまま裏返せば、弁理士である私にご相談いただくことの意義だと考えます。

  1. もっと権利の広い形で商標権を得ていただくべく、図案化の考え方をご助言したかった
  2. 登録の異議申し立てが可能な期間(2か月間)に、登録となったことを積極的に発表することは、私なら止めます
  3. 寄居町と、公的な機関が権利者であれば、ほんの少しの工夫で、”地域 団体 商標”として名称のみで、登録を目指せたでしょう
  4. 指定する商品について、特許庁から指摘(拒絶理由)を受け、そのことで4か月、登録が遅れてしまっていました。これは、事前に防ぐことができたと想像します
  5. やはり、3年後の、具体的な登録商標の”使い道”をしっかり話し合った上で、商標の取り方の作戦を練ると想像します

私たちの存在価値は、

『そのアクションにより、問題を解決する』

という一点が重要になるかと存じます。

お客様が独自に調べたり、商標について発想したり、特許庁からの指摘に応じたり、そのような”一連の解決手段”を、肩代わりして、同じ費用を充てるなら、もっとも最適に問題解決(商標登録にとどまらず)を目指していただく、という点です。

特に、事後対応よりも、最初の計画へのご助言が、もっとも価値を感じていただけることと想像します
☆(ゝω・)v

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

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