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ティラミス「タダ乗り」問題を弁理士が解説

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商標、知財契約、著作権などを専門とする弁理士の田村(たむきょん)です。 一昨日の朝の情報番組で、ティラミスの店舗が、既存のティラミスのブランドを”パクって”いるとの報道があり、そのことについて調べましたので、弁理士として...

商標、知財契約、著作権などを専門とする弁理士の田村(たむきょん)です。
一昨日の朝の情報番組で、ティラミスの店舗が、既存のティラミスのブランドを”パクって”いるとの報道があり、そのことについて調べましたので、弁理士として分かりやすく解説したく存じます。

今回の騒動の全体像

今回のティラミスのパクリ報道は、ざっと説明すると、どのような内容なのでしょうか?』

『はい。以下に全体像を箇条書きしますね!

  1. もともとシンガポールから2013年に日本へ進出した、ある程度認知度のあるティラミス店”ティラミスヒーロー”が在った(以下、背景がピンクの画像)
  2. そこに、2019年つまり今月、HERO’S(ヒーローズ)というティラミス店が別企業によりOPEN(以下、背景が黒の画像)
  3. 更に、後発のHERO’Sの経営者(T氏)が経営する別企業の名義で、オリジナルのティラミスヒーローのロゴマークそのものが、横取りで商標登録されてしまっている
  4. これにより、オリジナルのほうの企業が、ロゴマークやブランド名を変えざるを得ない事態へ発展

オリジナル(ティラミスヒーロー)

(1.画像は、オリジナルのティラミスヒーロー公式ホームページより引用(2019年1月26日時点))

HERO'Sのティラミス

(2.後発のHERO’S公式ホームページより引用(2019年1月26日時点))

ティラミスヒーロー横取り登録

(3.後発のHERO’Sの代表が、やはり代表を務める別企業の名義で取得してしまった登録商標)

ティラミスヒーロー側のお知らせ

(4.オリジナルのティラミスヒーロー側のお知らせ文)

 

後発のHERO’Sの行動に問題はあるのか?

『全体像は分かりました。何となく後発のHERO’Sという企業がずるいように感じますが、具体的には、どういう行動が、問題なのでしょうか?』

後発のHERO’S側は、大きく2つの行動をしていると思います。

  1. ティラミスの容器に、動物を擬人化したヒーローのイラストを付けて販売している
  2. 他社の既存ロゴマークを、横取り的に商標登録してしまっている

『確かにそうですね。この1.のヒーローイラストを付ける行為は、NGつまり違法なのでしょうか?

『私の見立てでは、この行為自体は、HERO’Sの行為に違法性は無いと判断しています。』

『どうしてですか?パクっているような気がするのですが・・・』

『以下、ざっと解説しますね!

  1. “コンセプト”は、独占できる知的財産と言えるか?
    確かに、ティラミスの瓶容器の正面に、動物を擬人化したようなヒーローのイラストをあしらえていて、これは、オリジナルのティラミスヒーローの商品に、コンセプトとしては類似しますね。
    しかし、あくまでコンセプトが似ているに過ぎず、このような”コンセプト”は誰も独占できませんから、違法性は無いと考えるのです。
  2. 著作権の侵害には問えないのか?
    一方で、ヒーローのイラストそのものだけに着目して、そっくりだった場合は、著作権の侵害に当たるでしょう。まぁ、今回のヒーローのイラストを見る限り、著作権の侵害には該当しないでしょう。
  3. 商標権の侵害にも、問えないのか?
    そして、仮に、オリジナルのティラミスヒーロー社が、容器のヒーローのイラストを、”洋菓子”などの商品を対象として、商標登録していたら、後発のHERO’Sは、商標権の侵害にも該当する可能性はありました。しかしこれも、商標登録をしていなかったため、商標権の侵害に問われる可能性もないと言えます。

 

後発は、オリジナルのロゴを勝手に商標登録できる??

『それでは、2.の、横取り的にオリジナルの店舗のロゴを商標登録してしまっている行為については、いかがでしょうか?』

後発のHERO’Sは、オリジナルのティラミスヒーローのロゴそのものを、契約や打合せ無く、勝手に商標取得してしまったとしたら・・これは完全にアウトですね。』

『でも、なんでそのような横取り的な商標の申請が、通ってしまうのでしょうか?特許庁は審査するんですよね?』

『審査はします。ただし、世の中に流通し始めているかどうか、を審査するというよりも、あくまで、”すでに登録されているか、出願されている他人の商標と、類似しないか?”という登録可否の観点で審査します。ネーミングの商標なら、審査官も登録商標同士の比較だけではなく、インターネットで一般的な検索もするようですが、さすがに、ロゴマークとなると、なかなか登録商標ではない、流通している他人のロゴを見出すことは、難しいのではないでしょうか。
ですから、このオリジナルの企業がロゴマークを商標登録しない以上は、後発の企業が横取り的に出願してしまったら、登録となってしまうことは、十分にあり得ます。』

 

オリジナルの企業は登録商標を取り返せないのか?

『でも、、やっぱり、特許庁の審査官が横取り的な商標だと気づけなかったというだけで、全くの他人の登録商標になってしまうのって、不公平というか、間違っている気がします!!』

『その通りですね。特許庁は、2つの、救済措置を用意してくれています。つまり、審査にも限界があるので、当事者による”異議”に、委ねている部分があるわけです。その2つとは、

  1. 登録から2か月間は、商標登録への”異議申し立て”を当事者以外も誰でもできる
  2. その後は、当事者に限って、”登録を無効に”するための審判を請求できる

という救済措置です。
だから、オリジナルの企業も、このような横取りがあっても、取り返すことは十分にできます
(今回、後発の企業が、オリジナルの企業へ、商標権の使用権を譲ることをホームページで発表しています。以下抜粋)』

HERO’Sが商標の使用権を認める発表

『疑いたくは無いですが、、ネーミングならたまたま被ってしまって、先に商標登録、という可能性はありますが、完全に同一のロゴマークを後発が取ってしまう、って、、どういう魂胆なのでしょうか・・』

『オリジナルのティラミスヒーローのホームページでは、”ロゴマークを使用できなくなってしまいました”という告知も含まれていましたので(使用権が譲られる前の告知でしょう)、ほぼ間違いなく、後発の企業から、”ロゴの使用差し止め”の、権利行使を受けていたのでしょう。これをすることのメリットを想像すると、後発企業は、オリジナルのブランド力を、弱めさせて、市場での、自分たちの地位、シェアを、アップさせたい、という魂胆は、あったのかもしれません。真実は闇の中です。
私は、後発の企業の代理人をした弁理士事務所にも、落ち度があると感じます。
本来は、商標の出願の依頼を受けたとき、それが、どういう風に使われる、使う予定のロゴかなどの、使用実態を、しっかりと伺う責務がありますから。そういうのを、しっかりしないまま、依頼を横流し的にそのまま出願してしまったのでしょう。これは、弁理士というプロフェッショナルとしては、反省すべき点があったのではないでしょうか。人の振り見て我が振り直せ、ですので、当所も気を付けます。』

 

このような事態を防ぐために、できること

『今回、ティラミスヒーローという先発企業が被害に合いました。
しかし、同じような事態って、悪どい企業があると、起こりうると思うんです。』

『私も全く同じことを感じています。時代が、”利己主義”な時代になっているように感じますので、今後、ティラミスに限らず、あっちこっちで、”後発企業が、オリジナルの商標を横取りしてしまう”という事態は、起こり得ますね。犯罪ではないですからね、一応。』

『そしたら、例えば、自分たちがオリジナルな商品名やブランドを作ったとき、こういう事態に巻き込まれないために、何をしたらいいのでしょうか?』

『やっぱり、”うちのブランドや商品名は、消費者の間では有名だから”と、認知度を過信しないことはないか、と感じます。自分たちは業界で有名になりつつある、と感じていたとしても、大局的に見たときに、他人が商標を取れないぐらい、確固たる認知度がある、と特許庁や世の中に判断してもらえるとは限りません。いや、むしろ、大規模、大きな予算の広報戦略でも敷かない限りは、その地位は、なかなか得られないでしょう。
ですので、”このロゴマークや商品名は、10年間は、変えたくない”と思うのであれば、とにかく、商標を取っておく、これしか、防衛する手段は無いのかもしれません。
(9万円ぐらいで、1件の商標は取れますので。こちらをご参照ください)』

(冒頭のアイキャッチ画像の背景は、HERO’Sホームページより引用)

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

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