ネット通販で、自社商品が”模倣”された時の対処法 update2018年11月30日 シェア ツイート こんにちは。商標、著作権、知財契約など知財全般を専門とする弁理士の田村(たむきょん)です。 ここ最近、「ネット通販で自社商品を販売していたら、模倣され始めた」というご相談を多くいただきます。そういう場合の対処法、考える手順を解説したく思います。 まず何がショックなのか気持ちの整理をする 『たむきょんさん、私、1年前からオリジナル商品のアロマオイルをAmazonで販売しているんです。 そしたら、先週ぐらいから、全く同じ商品名で、ライバルのA店がやっぱりAmazonで販売し始めているのを知って・・』 『それは穏やかじゃないね・・何ていう商品なの?』 『“ラグジュ・アロマ”という商品名を私が考えて付けてます。ライバル店も全く同じ商品名なんです。容器やラベルなどは全然ちがうんですが。』 『模倣されていることで、このままだと、えりなさんは、何を嫌だと感じますか?』 『うーーん。もしこのままだと・・ リピーターのお客様が、ライバル店のものを混同して購入してしまうのでは・・ うちの商品の売上が落ちてしまうんじゃないか・・ ライバル店の同商品が、粗悪品だった場合、うちの商品まで評判悪くなるのではないか・・・ このあたりが、私の心配事です><。。』 ライバルの行為は本当に”模倣”なのか? 『えりなさんが、Amazonの相談窓口に、正直に、今起こっていることを相談したらどうかな?』 『実は、それをしたんですが・・』 『Amazonは、どんな反応だった?』 『“模倣”や”権利侵害”だと断定できないので、対処できません、という反応でした。たむきょんさんも、模倣じゃないと思いますか・・?』 先に売り始めた人には、どんな権利がある? 『先に”ラグジュ・アロマ”という商品名でAmazonで売り始めたのは、えりなさんなんだよね?』 『はい。私は1年前。ライバル店は取扱開始日は、1ヶ月前の日付でしたから。』 『ある商品を、先に売り始めた人には、どんな権利があるんだろうね。』 『変な言葉ですが、“先売権”(せんばいけん)みたいな主張は、通用しないんですね・・』 『そうだね・・自由競争が基本の世の中だから、先に売り始めた、というだけでは、なかなか、ライバルの行為を模倣だ、とは言いづらいよね。 例えば、この前、近所の大学の学園祭に行ったんだけど、模擬店で、焼きそばを売っているお店がたくさんあってね。とあるお店が300円で販売していたら、それを見て、別のお店が250円で販売すること、それは、悪い行為ではないよね(ずるいけど)。 商品名”ラグジュ・アロマ”をそっくり真似している行為については、“ラグジュ・アロマはえりなさんの商品である”、と消費者に認知されている場合を除いては、これも、誰もが自由に使える商品名、と言っても過言ではありません(不正競争防止法の保護対象ではない)』 確実にライバルの行為を止めたい場合 『そしたら、泣き寝入りするしかないのでしょうか・・』 『一番最初に質問したけど、“ライバル店の販売の継続が、なぜ嫌なのか”に立ち戻ることが大切なんだろうね。』 『私は、一番嫌なのは、リピーターさんが、「アロマは、”ラグジュ・アロマ”しかありえません!」と言ってくれたりするんですが、そういうお客様が、ライバル店の”ラグジュ・アロマ”と、混合して購入してしまって、ガッカリしたりすることを、避けたいです!その一心です!』 『なるほどね! そしたら、“ラグジュ・アロマ”という商品名の、商標登録を目指すのが1番だよ! しかも、すでにその商品名でネット販売しているし、模倣され始めているという事実も証明できるため、特許庁に事情を伝えることで、通常7か月後の審査結果のところ、約2ヶ月で、審査結果を得ることも可能だよ!(早期審査の申請。採択されない場合もある)』 『でも、、アロマオイルの名前に”ラグジュ・アロマ”って、取られてそうですが、、たむきょんさん、取れると思いますか?』 『もう調べてあるよ♪職業病です(笑) アロマは、3類「香料類」かな。ラグジュアロマと呼び方が似ている可能性があるのは、以下2件でした。 どちらも、”ラグジュ・アロマ”とは非類似と考えて問題ないでしょう。 そして、”ラグジュ”だけでも、調べたけど、”ラグジュ・アロマ”に類似しそうな登録商標は発見されませんでした。』 知っておいたほうがいい点 『”ラグジュ・アロマ”という名称は商標を取れるかもしれないんですね。例えば、”玄関アロマ”みたいな、とっても一般的な商品名でも、商標を取れば独占できるんですか?』 『良い質問ですね。”ラグジュ・アロマ”は、”贅沢なアロマ”という意味合いは何となく分かるけれど、だからと言って、商品の品質を直接想起させるとは言い難いよね?贅沢って、人それぞれだし。だからきっと商標として認められる可能性が比較的高い。でも、“玄関アロマ”という名前は、”玄関に置くことを目的としたアロマ”という意味がすぐ伝わってくるし、商品の特徴を名称化しただけだよね。だから、そういう名称は、商標は認めてもらえない可能性が高いです。』 『じゃあ、もし私が、Amazonで”玄関アロマ”という商品名で販売していて、ライバルから模倣されてしまった場合は、商標を取っての解決、というのは難しいんですね?』 『結論から言うとそういうことになるね。ただし、ここでは詳しく述べないけど、えりなさんが”玄関アロマ”という商標を取る方法は、ゼロではありません。その商標で、名称が単にカブっているライバルに権利行使は難しいでしょうが。 また、えりなさんの独自の商品ではなく、既製品を仕入れて、代理店のような在り方で転売するような場合も、その仕入れ品に付けられている商品名を独占することは基本は出来ませんので、その点もご承知おきを。』 どれぐらいの費用がかかるか 『最後に、もし私が、”ラグジュ・アロマ”で商標を取ろうと思ったら、だいたいいくらぐらい費用はかかるんでしょうか?』 『せっかくだから、商標を取るのと、最終目的であるライバルの行為を止めるのと、ざっくりとした費用を書きましょうかね☆ 商標の出願: 印紙1.2万円+手数料約3.5万円 事情を伝えての早期審査: 採択された場合、手数料2万円 商標の登録: 印紙1.6万円+手数料3万円 Amazon等、通販サイトへの通告対策: 手数料3万円 ライバルへ直接権利行使する場合の対策: 手数料5万円+郵便など実費 ※すべて概算』 『なるほど。私が細々と販売して、小規模の売上で経営している程度では、費用対効果はしっかり考えたほうが良さそうですね。』 『そうだね。私も、こういうご相談をいただいた場合は、お客様には、“商標を取って権利行使するに見合うだけの、今後のビジネスの予定でしょうか”という点はご確認するようにしています!もしくは、Amazonへの通告対策など、ご自身でやってみても、費用を抑えられたりしますね。』 記事をお読みくださり、ありがとうございます。 商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。 みぎのうで知財事務所(代表 田村) シェア ツイート