
2016年から2017年まで、非常勤講師を拝命し、都内私大の情報学部にて、毎年約100名の学生さんたちに、全15回で『情報倫理』(ネットリテラシー)について、講義をさせていただいておりました。
その時の感想は、私が知恵やリスク管理(危険管理)として、学生さんたちにお役に立てる部分もあれば、逆に、『学生さんたちから教わることも多かった』ということです。
私以上にスマートフォンを使いこなし、SNSなども詳しい学生さんは多く、それだけ、大人が想像している以上にネットトラブルのリスクを抱えていると言えます。
何名かから、実際に、「こんなネットトラブルを疑われてしまい、バイト先から指摘を受けて困っている」というかなり具体的な相談もありました。
今回の記事は大学生のかたももちろん参考にしていただきたいですが、もっと若い、中学生や高校生のかたがたを読み手に想定して、
『[保存版]中学生・高校生向け。ネットトラブルを起こす前に。5つのことを知ろう』
という内容を執筆します。参考になりましたら幸いです。
1つ目:どんな目的でその行動をしたいのかを必ず自覚しよう

例えば、あなたの行動が、自分に嫌がらせをしたAくんの個人情報や写真を、匿名で、SNSにばらまこう、という行動だとしますね。
この行動の”目的意識”は、一見、『正義感から。Aくんから同じ被害を他の人が受けないように、という狙い』と考えがちです。
しかし、あなたへのAくんの行動が、100人聞けば100人とも「犯罪だ」「非道だ」と判断するものだとしたら・・・
あなたは、学校の校長、教育委員会、警察、に相談するはずです。
それをしないで、SNSでの拡散を選択しよう、としているのは、きっと、「真の目的」が「正義感」にはないからです。
「Aくんをネットでさらして、恥ずかしい想いをさせたい。Aくんに復讐したい。俺(わたし)を怒らせると痛い目に遭うと思い知らせたい」
という目的意識が、本音のところではないでしょうか。
そのような目的意識が本音である以上、あなたの行動は、「武力や暴力の行使」に等しいはずです。
ですので、あなたが、むかついた相手を、ネットでさらそうとしたような場合、一歩、踏みとどまって、
『俺は(わたしは)、この行動をすることで、どんな目的意識を達成したいと本当は考えているのか?』
を冷静に、振り返ってみてください。
2つ目:得られる快楽の大きさと危険の大きさは常に正比例

これは、様々なことに言えることですが、あなたが、何か快楽を得ようとした場合、あなたに訪れる危険もまた、ほぼ同程度、であるケースは非常に多いんです。
例えば、先ほどの例だと、あなたが学校で、Aくんに嫌がらせやイジメを受けたとします。
そのことを、3人の友達グループに、LINEでチクったとします。
そのことで得られる快楽は、3ポイント、としましょうか。
一方、リツイートなどしてもらえれば、5000人が見てくれるかもしれないTwitterなどで、Aくんのイジメの音声やAくんの写真を、ばらまいたとします。
実際に5000人が見てくれて、あなたに同情してくれたら、、そのことで得られる快楽は、5000ポイントと言えるかもしれません。
しかし、たったの3人のみにチクった場合の、あなたに訪れる危険性と、5000人にさらしてしまった後にあなたに訪れるかもしれない危険性とは、やっぱり綺麗に正比例の関係ですよね?
5000人にさらしたことによって、以下のようなことが起こるリスクがあります。
- 学校関係者があなたのSNSを見てしまい、学校から保護者と共に呼び出され、停学または退学となる
- Aくん本人かAくんのツレがあなたのSNSを知り、復讐のために、帰り道、覆面をした彼らに金属バットで襲われる
- 5000人の中で、「あなたのほうにも非がある」と考えた人が現れた場合、今度はあなたの個人情報を探し当てられてしまい、あなた自身が同じく5000人などにさらされてしまうことも
まとめると、あなたが「ネット」「拡散」などのチカラを利用して、他人や例えばバイト先、などをおとしめようとした場合、その拡散力の大きさと、あなた自身の責任を問われる度合い、しっぺ返しを喰らう度合い、は、綺麗に正比例の関係性にあることを、重々、念頭に置くようにしましょう。
3つ目:ネットと現実。どちらが信頼関係があるか

先ほどまでの例で、あなたが学校で、Aくんにイジメや嫌がらせを受けていたとします。
あなたが以下2つのどちらの選択肢を取ろうか、迷ったとします。
- A 両親に、正直に打ち明けて両親に、その対応策を一緒に考えてもらおうか・・・
- B イジメのシーンをこっそり撮影して、音声を記録して、匿名で、SNSに拡散させてしまおうか・・・
結局、B「ネットで拡散」を選択したとします。
拡散して1週間で、リツイートなどのお陰で、5000人があなたのチクリを見てくれたとしましょう。
この時、これからのあなたを、この5000人が応援し、守って、協力してくれると、思いますか?
いいえ。それは、100%ありえません。なぜならこの5000人は、
『非日常的なイジメの情報を得て、面白いと思ったから、その情報に飛び乗った』だけ
だからです。リツイートなどしてくれても、3日後には、あなたのことも、そのイジメの内容も、忘却の彼方でしょう。むしろ、Aくん側が、今度は、あなた自身の悪い点を、さらした場合、Aくんの言い分も正しい、と、判断された場合、コロっと、Aくんの応援をし、拡散するでしょう。
ネットでたまたまつながった人との信頼関係は、この程度なんです。ゼロに等しいですね。
一方で、上記の選択肢で、あなたが、「A両親に打ち明けて、対策を一緒に検討」を選んだ場合、どうでしょうか。
あなたの両親は、あなたがそのことで苦しんでいれば、1年かけてでも、3年かけてでも、あなたのチカラになってくれるのではないでしょうか。
リアルの「信頼関係」というのは、目先の効力は小さくても、ネットでにわかに繋がった人との信頼関係の“比”にならないんです。
ネットの拡散力に、目がくらみ、神頼みのように、さらしたくなるような時があるかもしれません。
しかし、ネットの拡散力は「神」ではなく、「あなたを盲目にさせる麻薬」に等しいとお考えください。
4つ目:若者や無知の利用者(アマ)は、プロに食い物にされる

次に、例を変えましょう。あなたは、飲食店でアルバイトをし始めたとして、タイムカードを切ってから、タダ働きなどをさせられることもあり、バイト先に対して、少しムカついていたとします。
ある日、店長が不在の営業で、暇だったので、そのバイト先でふざけている写真を撮影して、軽い気持ちでTwitterに流してしまいました。
翌日、バイト先の先輩から指摘され、すぐに投稿を削除したものの、投稿をスクリーンショット(画面ごと保存)などされ、3000人以上の人が拡散していて、自分の投稿を削除しても、どうしようもない状態になってしまいました。
さて、Twitterを、閲覧している人たち、時々、日常の素朴なことをつぶやいている人たち。これらは、”アマチュア”と考えてみてください。
一方、Twitterで、過激な情報を拡散させたり、1人でも多くのフォロワーを集めようとしたり、それらによって収入を得ようとしている人たち。これらは”プロ”だと考えてください。
つまり、少しでも面白い情報を収集して、収入を増やそうとしている”プロ”にとって、あなたたち”アマチュア”は、いつでもかっこうのターゲットなんです。
Twitterという1つの社会であっても、アマチュアとプロが混在しており、あなたが軽い気持ちで、友達10人ぐらいが笑って見てくれたら嬉しい、と思っていたとしても、収入を目指しているプロは、あなたの社会的地位や、損失なんて、どうでもいいんです。
そういう世界で、情報発信をしようとしていることを、忘れないでください。
(決して、脅しているわけではありません。情報発信は、読書をしているだけよりも、あなた自身を成長させます。ルールやマナーが頭に入っていれば、どんどん積極的に情報発信はしたほうがいいんです)
5つ目:損害賠償は、数十万~億。親と兄弟すら破滅の道

最後に。
クラスのAくんをネットにさらしてしまった場合でも、バイト先の信用を失墜させる動画を拡散してしまった場合でも、あなたは、「100%悪い」状態となります。
被害者が個人の場合名誉毀損罪、被害者が企業の場合、信用毀損罪・業務妨害罪。
まずは、刑事罰に該当します。
そして、たとえあなたが未成年であったとしても、相手からの損害賠償の責めは、家族で必ず負うことになります。(アルバイトが決まったときに、雇用契約などに署名をしており、その中に、業務妨害などの時の措置が盛り込まれていることが多いでしょう)
『両親が支払うんだし、俺(わたし)は痛い目に遭わない』
だなんて、考えているかたは、、まさかいらっしゃないですよね?
例えば、あなたのバイト先は、1億円かけて、2019年2月にオープンしたとしましょう。あなたの軽い気持ちのいたずら動画がTwitterに拡散したことにより、客足が一気に鈍り、オープンからたったの半年で閉店に追い込まれたとします。そのことで、経営者に借金が1億円残ってしまったら。
あなたの両親は1億円の損害賠償請求をされる可能性があります。なぜなら、あなたの行為1つで、1億円かけて作られたお店を1つ、潰してしまったのですから。
このとき、両親の財布が痛むだけ、と考えるのは、あまりに愚かです。
- 両親のコツコツとこれから貯める予定だった1億円は、両親の老後のための資金だったかもしれません
- もしくは、あなたが大学生になって留学したいと言ったときのための、貯蓄だったかもしれません
- あなたが結婚すると言って、家を出るときに、資金提供を予定していたかもしれません
- 大学院に行って、博士課程を取りたい、と言うかもしれないあなたの学費だったかもしれません
つまり、
「ご両親の財布」というのは、「家族全体のパワー」なんです。
ご両親が巨額の出費や借金を負った場合、それは、あなたの家族全体でこれからを生きていくための、大切な資金を、大きく失ったことになるのです。
あなたが将来、両親に、30年かけて、返済をすることになる可能性もありますね。
場合によっては、あなたの住む街で、ウワサになってしまい、せっかく35年ローンで購入したあなたの家族のおうちも、手放さなければならないことになるかもしれません。
(事故物件、と言って、そういう理由で、手放すおうちは、いくらの売り値も付きません)
つまり、未成年だから、損害賠償は親が負ってくれる、とか、あなた自身は見逃してもらえる、と考えてはいけないんです。
以上です。
最後に・・・もう1度、ネットトラブルを起こしてしまう前に、、覚えておいてほしい5つのことを、以下に書きますね。
- どんな目的でその行動をしたいのかを必ず自覚しよう
- 得られる快楽の大きさと危険の大きさは常に正比例
- ネットと現実。どちらが信頼関係があるか
- 若者や無知の利用者(アマ)は、プロに食い物にされる
- 損害賠償は、数十万~億。親と兄弟すら破滅の道
(学校の学生さんや教職員様向けの講義・講演を柔軟に承っておりますので、お気軽に声がけください。こちら)
執筆:田村恭佑
(認知心理学×弁理士×経営コンサル)