
経営コンサルタントの田村です。
皆様の企業では、以下のような悩みはございませんでしょうか。
- 若者向けの求人をしても、ほとんど応募がない
- 慢性的に人手不足で、既存の従業員に負担がかかっている
- せっかく若者を採用できても、半年以内に辞めてしまうことが多い
- 求人費用で、利益のほとんどが食われている
- 入社したての若者にどのように接すればいいか、分からない
上記は特殊なケースではなく、いずれも、現代の多くの企業が抱える採用や教育、会社経営に関する悩みではないでしょうか。
今回、「採用の手法」に着目するのではなく、「せっかく入社した若者の離職を防ぐ」という観点で、記事を書きました。
新卒内定率はなんと・・・
2019年卒の大学生・大学院生の、新卒内定率は、95.4%(2018年12月時点)。
(リクルートキャリア「就職みらい研究所」より。2018年12月時点。)
こちらの調査によると、彼ら2019年卒の大学生・大学院生の平均内定取得社数は、なんと2.5社。
つまり、現代の”就職売り手市場”を具体的に言うと、
『大学生1人を、2~3社で競合している状態』
です。
簡単に辞めるヤツなんか要らん!…ホントに言ってて大丈夫?
売り手市場ということは、イコール
『若者が、入った会社が自分に合わないと思えば、また次の選択肢がある』
とも言えます。
これは企業や上司から見れば、
『若者は、気に入らないことがあると、すぐに辞める』
とも映ります。
その状態を見て、
『そんな、簡単に辞めるヤツなんて、初めから要らない!』
と切り捨てて考えていて、果たして大丈夫でしょうか。
これは男女で言えば、
『ふん。俺の魅力に気付かない女性のほうが悪いんだ。いつか、俺の良さに気付いてくれる、素敵な奥さんを捕まえるんだ』
と、”負け犬の遠吠え”をする結婚適齢期の男性に似ていませんでしょうか。
企業に話を戻しますと、『若者に簡単に辞められてしまう』その状況に、経営者や上司のかたは、真摯に目を向けなければ、時代に取り残されてしまいます。
かと言って「過保護」は不正解
では、入社したての若者をおだてて、注意することも無く、とにかく居心地の良さだけを実現してあげることが、正解なのでしょうか?
これも男女の話に置き換えれば容易に答えが見えます。
もし、自分とお付き合いしてくれる女性が現れて、嫌われたくないから、結婚してほしいから、言いたいことを言わずに、相手のこだわりにずっと合わせて、自分を殺して、いざ家庭を作ったら・・・
墓場のような家庭が待っていますよね。
また企業に話を戻しますとやっぱり、入社したての若者の離職を恐れて、気を遣いすぎたり、過保護にしたりすることは、不正解と言えます。
離職が少ない企業の上司は、部下にこう接している
それでは、就職の超売り手市場の現代において、過保護になるのではなく、適切な方法で、若者の離職を防ぐ術は、あるのでしょうか?
具体的な言動では、以下の表の左側の言動が多い上司のもとで働く部下は、離職が多いと経験上感じます。
一方、右側の言動が多い上司のもとで働く部下は、離職をすることなく、安定的に働いていると感じます。
部下の離職が
多い上司の言動
|
離職が少ない
上司の言動
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困っていると、すぐに手助けをしてあげている |
助けを求められるまで、依頼した仕事は静観する |
言い訳をさせてあげないことが多い |
部下の行動に関心を持ち、行った行動の理由(言い訳)を本音で聴いている |
連帯責任をよく発動する |
目標はチーム全体で共有するが、育成方針は一人一人個別、という意識が強い |
意見やアイデアをあまり求めない |
上司が完璧でないことを認め、時々、部下のアイデアや意見を本音で求めている |
労働時間に対してケチになり、すぐに仕事を吸い上げてしまう |
多少残業が発生しても、任せた仕事をギリギリまで任せる |
事業部の理念を日頃伝えず、仕事を”作業”のように指示している |
事業部として顧客にもたらしたいベネフィット、こだわり、を定期的に伝え、そのために出来ることを自由度をもって部下に考えさせている |
プライベート(友達関係、恋人、家族)について、茶かしたり、口出しする |
部下のプライベートには相談されない限り、介入しない |
時々怒鳴ったり、大声で叱ったりする |
部下のミスや怠慢に対して、「どういう環境の改善を図るべきか」を冷静に考えられ、部下を一方的に責めない |
「上下関係」ではない。「対等」である意識
上記のように表でまとめてみて、自分で気付いたことは、「家族の関係」に非常に似ていると感じます。
もし上司のかたがお読みでしたら、あなたは、親や奥様、ご主人から、どのように接してほしいでしょうか。左側でしょうか。右側でしょうか。
そして、あなたご自身はお子様や奥様、ご主人に、右側のような接し方を、してあげられていますでしょうか。
職場でも一緒です。小さな習慣として、上記の表の右側の言動を、丁寧に、大切にし続ければきっと、部下、新入社員のかたの離職はずいぶん減るのではないでしょうか。
「上司」と「部下」という言葉では、「上」と「下」という文字を含んでもいますので、つい、「上下関係」を知らず知らずのうちに相手に強いている可能性があります。
しかし、20数年あなたと全く違う人生をここまで歩んできた新入社員もまた、立派な一社会人ですし、あなたにはない経験も知識も魅力も必ずあります。
ですから、新入社員に対して「上下関係」の一切を忘れて、お互い対等な立場として、相手を尊重し、理解し、吸収しよう、という姿勢が大切なのではないかと考えます。
執筆:田村恭佑
(経営コンサルタント×認知心理学×弁理士)