私は、約5年間、知的財産と産学連携のマネジメントを大学&研究所の中で担当させていただき、その後、弁理士事務所を経営し、5年経ちます。
大学は、その大学の産学連携の方針や”温度”がマチマチなため、なかなか、情報交換をしあって、適切な産学連携の推進ができる、というわけではない、特有の苦労があります。
そこで、多くの大学様の産学連携の推進のサポートをさせていただいている経験から、少しでも、
『大学の方針の違いがあっても、共通する原理』に値するような情報発信
をできたらと考えています。
『大学教職員向け THE 産学連携!』連載第4回目です。今回は、
『発明や特許と、収入の関係』
です。
(第1回 『収入や研究費は得られるか自問を』 こちら
第2回 『産学連携の課は”警察犬”にならないようにしたい』 こちら
第3回 『”URA”が活躍する王道』 こちら)
※なお、私の記事で「大学」と言った場合、研究所、研究機関も含んだ考え方とします。
文部科学省が推し進める”二極化”
- 技術の発展を推し進めたい”技術分野”に軽重を付けるようになった
- 著名な研究者を多く抱える大手国立大学に、研究予算を集中して付ける傾向にある
- 産学連携や技術移転に係る予算を、文部科学省が直接付与するのではなく、経験豊富な職員も居るJST(国立研究開発法人 科学技術振興機構)に多く委ねるようになっている
- 中小規模大学が、独自に契約書などの作成を行う負担を考慮し、人材のための予算の考慮ではなく、”さくらツール”など、仕組みにより後方支援を行っている
省が、もっとも効率よく限りある研究予算で研究成果を創出しようと思ったら、やっぱり、成果を上げられる著名な研究者の方々が集まる大手の国立大学に、なるべく多くの研究予算を集中させたほうが、成果に結びつきやすいでしょう。ある意味、当然の世の中の流れとは存じます。』
<参考>※1
旧七帝大だけで、受託研究(民間+省庁+地方自治体)の予算の何%を取得しているか(2017年度分)
旧七帝大(東京、京都、東北、九州、北海道、大阪、名古屋)・・・ 計1170億円
国立+公立+私立(高専含む) 全555大学で・・・ 計2310億円
つまり、旧七帝大だけで、受託研究全体の予算の51%を取得
(※1・・・文部科学省 2018.3.31回答分 『2017年度 大学等における産学連携等実施状況』より)
中小規模大学の平均特許保有数
中小規模大学の平均特許収入
旧七帝大の、2017年度の、受託研究による受け入れ額の各大学平均は、167億円です。
一方、302大学の平均は2億円。
つまり・・・』
特許は大学にとって”お荷物”なのか?
しかし、独立もして、客観的に大学の”発明”や”特許”に携わるようになり、徐々に、考え方が変わってきました』
令和の時代を生き抜くための、大学の知的財産の”戦略”
- 民間企業から資金を得る研究ではその相手先のニーズに応える。特許創出が希望であればそのための研究をする。そして、特許化の費用の大半をその企業に負担してもらう。なるべく特許費用の大学側の負担を軽減する。
- 公的機関や地方自体体からの受託研究では、社会のインフラ整備に一役買うような成果を、積極的に特許化する。予算の使途が特許費用に充ててもいいようであれば、積極的に研究費から特許費用を充当する。つまり、自大学による特許費用負担をなるべく最小限にする。
この場合、特許収入を目指さなくても、そのインフラ整備のための重要な特許成果を上げられている、というステータスを保つことにも価値がある。そのステータスのお陰で再び受託研究を得られることもある。 - 外部からの研究予算によらない、学内予算による研究成果においては、”その発明が教員自身のこれから築いていく研究領域に不可欠な技術かどうか”という視点で、厳選した上で、特許化を図る。
- 上記3.の例外として、もちろん、民間からの引き合いが見込める発明であれば、教員自身の重要な研究領域と少し外れていても、特許化を目指してもいいと考える。
- 現在保有しているけれど、特許収入にも、受託研究や共同研究の引き金にも3年間繋がっていない特許は、勇気を持ってどんどんと放棄する(または発明者が希望する場合は、発明者帰属にすることも可)
- 最後に、大学に所属して間もない教員による発明は、その後、”もっと意義のある発明を”と考える契機にもなるため、リジェクトし過ぎず、モチベーションを保っていただきやすいような対応も心がける
(もし、お読みになった大学のかたで、産学連携活動の再検討を図っていきたい、という大学様がいらっしゃったら、柔軟にご支援いたします。)
執筆:田村恭佑
(認知心理学×弁理士×経営コンサル)

