
こんにちは、弁理士の田村です。2019年から特許庁は大混雑の様子で、商標登録を申請してから、審査結果が得られるまで、なんと1年かかる状況です。
ある意味、”異常事態”と言っても過言ではありません。
ただ、そういう多忙な特許庁にしっかりと感情移入をして、丁寧な商標登録の申請を行うことが非常に大切です。全ての弁理士さんや出願人が特許庁に感情移入して、丁寧な商標登録の申請をしていれば、きっと今の異常事態も大きく改善されることと想像します。
今回は、そういう、特許庁への感情移入は忘れないように、それでも、どうしても早く商標登録を得たい、というかたのために、早く商標登録を得るための作戦を、記事にします。
(昨年の9月に同趣旨の記事を書いています。こちら 今回は情報のアップデートです)
商標登録までに13ヶ月かかる現状
『商標登録を希望している友達がいるのですが、特許庁に申請をしてから、登録になるまで、だいたいどれぐらいの期間がかかるのでしょうか?』
『12か月から13か月かかるんです。2019年ぐらいから、急に期間が長くなってしまいました。私はそれまでは、お客様に、”7~8か月では審査結果が出ます”とお伝えしていましたから。
以下が、特許庁が公表している、審査に要する期間の目安です。』

(特許庁HP「商標審査着手状況(審査未着手案件)」より抜粋して引用)
特許庁が大混雑している理由
『4~5年前と比べて、昨年ぐらいから、商標登録にかかる期間が長くなっている、ということなんでしょうか?』
『はい、はっきりと期間が長くなっています。理由はいくつかあると思うのですが、大きくは2つ、考えられます。
- 商標登録の申請の件数が、年々増えている
(商標登録の必要性が、多くの事業者様に認知されるようになってきている)
- 特許庁のスムーズな審査の妨げとなるような商標登録の申請の案件も増えている
』
『1の商標登録の申請の件数が増大している、というのは、9月の記事で理解しています。
2の「スムーズな審査の妨げ」となる申請も増えている、というのはどういう意味でしょうか?』
『商標登録のための審査は、3段階ぐらいに別れています。大きくは以下の通りです。
- 申請の”体裁そのもの”のチェック。例えば、出願人が正しく記載されているか、など
- (1をクリアした出願について)次は、商標を取りたいと主張されている商品やサービスの分野が適切に記載されているか、の審査
- 最後に、商標そのものが、登録にふさわしいものかどうか、の審査
1を、「方式審査」と言い、2と3を「実体審査」と言います。
このうち、1の「方式審査」から修正の指示やその対応、などに、ものすごく時間を要していることが分かります。審査(実体審査)の着手までに期間を要しているわけですから。
つまり、そもそもの、商標登録の申請の、”体裁”自体にミスが多いのではないかと推察されます。』
2月1日から新制度。ファストトラック制度
『大企業なら、1年ぐらい審査に時間がかかっても、先を見据えてビジネスを進めていると想像します。
ですが、中小企業やベンチャー企業、個人事業主のかたは、もっと短スパンでビジネスを考えていると思うんです。そうすると、自社ビジネスの前提とも言える商標登録に1年以上かかってしまうと、どうしてもビジネスに支障がある気がするんです。
何か、もっと早く審査結果を得る方法はないのでしょうか?』
『ちょうどタイムリーな質問です。
昨日、特許庁を通じて弁理士会からメールが来ました。”ファストトラック”という制度がもともとあったのですが、2月1日以降の商標登録の申請に対しては、条件さえ満たせば、申請から6~7か月で、審査結果を出してもらえるように変更されるんです。(特許庁からの正式な発表はこちら)』
『これまでのファストトラック制度では、何か月で審査結果を得られたんですか?』
『通常審査よりも2ヶ月早く審査結果を出す、という制度だったので、申請から10~11か月はかかっていたんです。あまりファストになっていないですね。』
『条件さえ満たせば、ということは、どういう条件があるんでしょうか?』
『2つの条件です。
- 商標登録の申請において、商標登録を得たい商品やサービスの記載内容が、特許庁が列挙している商品やサービスの文言とぴったり一致していること。商品名やサービス名を自作していないこと
- 商標登録の申請以降、特許庁に、その商品名やサービス名の修正を申請していないこと
弁理士事務所によらずにご自身で申請をしようとする場合は、この条件にしっかり合致させることは少し難しいかもしれませんが、弁理士事務所に依頼される際に、”ファストトラック制度の条件を満たす出願にしてください”と伝えれば、基本的には、理解してもらえると思います。
このファストトラック制度をしっかり利用する、ということは、特許庁に対して、丁寧に感情移入をして、審査の手間を少しでも省いてもらう、ということだと思います。』
もっと早く、そう、2ヶ月で商標登録する方法
『すでに他社から模倣され始めていたり、商標登録が認められるかどうか微妙なような場合だったり、6~7か月と言わず、もっと早く審査結果を得たい場合はどうしたらいいのでしょうか?』
『そういう出願人様のために、特許庁は、”早期審査”という制度を設けています。これは、商標登録の申請が完了してから、後日、別途の申請を行います。』
『申請が認められる条件はあるのでしょうか?』
『ファストトラック制度よりも、若干厳しめな条件があります。詳しくは特許庁のこちらのページを読んでいただきたいですが、シンプルにまとめると以下が条件となります。
- その申請した商標をすでにビジネスに使い始めていることの証拠を提出できる
(具体的な準備の段階でも可。証拠が重要)
- ファストトラック同様、商標登録を申請している商品名やサービス名に、特許庁が指定している文言をぴったり利用しており、自作していないこと(ただし例外もあり)
通常の審査、ファストトラック制度、そして早期審査、とまとめると以下の表になります』

費用はかかりませんので、気軽にお問合せを
『商標登録には時間がかかる可能性がある、と言えますね。急いで弁理士事務所に相談したいとは思いますが、相談からお金がかかるのでしょうか?ハードルが高いと感じるかたもいるのではないでしょうか。』
『あまた弁理士事務所はあるかもしれませんが、もしこの記事を読んで内容が理解しやすかった、とお感じになりましたら、きっと相性もありますから、どうぞ私の所に一度ご相談ください。弁理士事務所も色々ありますから、相性は重要だと思います。
当所は、相談も、その後の調査も、そして私からの専門的なご提案も、無料で行います。特許庁に正式な書類を提出する時に、手数料が発生しますが、気付いたら請求が発生していた、ということはありません。事前にいくらです、と丁寧にお伝えしますから。
気軽にご連絡ください。(Webのお問合せフォーム。なるべく早くリアクションいたします)』
執筆:田村恭佑
(認知心理学×弁理士×経営コンサル)