
商標を申請(出願)すると、約6か月半で、審査結果が特許庁より届きます。
晴れて、「登録査定」という結果だった時、5年で登録するか、10年で登録するか、選択しなければなりません。
当所は迷わず「5年での登録」をお客様にお薦めしていますが、その理由について、簡潔に説明します。
5年登録を選んでも、権利を更新できる?
『商標が、登録査定となると、5年で登録するか、10年で登録するか、選べる、ということですが、5年を選択しても、また更新すれば、もう5年、商標登録を維持することは出来るんですよね?』
『もちろんです!特許は、出願から20年間までしか、更新できませんが・・・
商標登録は、希望し、手続きさえすれば、何十年でも、維持できます
(維持には特許庁への費用や弁理士事務所への費用がかかります)』
5年/10年それぞれの費用
『5年を選択する場合と、10年を選択する場合とで、費用面は、どれぐらいの差があるのでしょうか?』
『当所にご依頼いただいた場合は、5年で登録する場合と、10年で登録する場合とで、費用は以下の通りです。
(例:「スターバックスカフェ」という商標が、「コーヒー」と「飲食物の提供」の2つの分野で、登録査定となった、と仮定)
- 【5年】
特許庁への印紙代(2分野) 32,800円
弁理士手数料 (〃) 34,800円
計 67,600円
- 【10年】
特許庁への印紙代(2分野) 56,400円
弁理士手数料 (〃) 34,800円
計 91,200円
(手数料には源泉徴収税が別途)』
『もし・・・5年を選択して、また5年後に、更新をしようとした場合は、その時の費用はどうなりますか?』
『5年後も手数料が変わらなければ、
- 印紙代(2分野) 32800円
弁理士手数料(〃) 15,000円
計 47,800円
です。10年で、一括で登録した場合と比べて、印紙代と手数料の総額で、約24,000円多くなる計算です。
(手数料には源泉徴収税が別途)』
5年を選択すべき2つの理由
『たむきょんさんは、お客さんの申請した商標が、晴れて登録となった場合、5年か10年の、どちらをお薦めしていますか?』
『当所の顧客は、99%が、中小企業、ベンチャー、公的機関や大学、個人事業主です。その顧客には、ほぼ決まって、”5年”での登録を薦めるようにしています。』
『どうしてですか?』
『ちなみに、当所が5年を薦めたことによって、5年後に手数料をいただけるとしても、15,000円のみです。
ですので、売上のためにお薦めしているわけではありません(むしろ、5年後にアラームを鳴らす、という管理コストが発生しますからね)
以下2つが、当所が”5年での登録”を薦める理由です。』
(1)ビジネスのライフサイクルが短くなっている
50年前や30年前であれば、ひょっとしたら、1つの電化製品や1つのブランドが、長く消費者に愛され、ロングセラーとなることがあったかもしれません。
しかし、平成からいよいよ”令和”に変わる現代は、SNSなどで新製品、新ブランドの情報を消費者がいち早くキャッチしやすくなり、結果、1つの商品やブランドを、10年間も愛してもらいつづける、というのは、かなり稀なケースとなっています。大半のビジネスは、事業開始から5年以内に”淘汰”されてしまうのではないでしょうか。
こういう時代にあっては、商標が登録になった時には、「10年以上は、ビジネスを続ける!」と意気込んでいても、いざ、ビジネスを開始してみると、思っていたようなブランディングに至らなかったり、もっと良い製品が登場してしまったりして、商標権自体が、”紙切れ”のようになってしまう可能性が十分にあります。
ですから、こういう時代においては、基本的には、10年ではなく、5年での登録をお薦めしているのです。
なお、前章の例では、「コーヒー」と「飲食物の提供」の2つの分野で登録となった場合を想定しました。
1つではなく、2つや3つの分野で登録商標となった場合、10年で一括で、登録してしまうと、それら2つや3つの分野を、1つに絞る、のは10年後になってしまいます。
(手続き上は出来ても、返金はされません)
ですので、5年で登録しておいて、5年後に商標権を更新する際に、不要となった分野を削除してしまえば、印紙代は半額になります
(2分野を1分野にした場合であれば半額)
5年にしておいたほうが、コストダウンに繋げやすいのです。
(2)5年後にも売れているブランドに育てていれば、若干多めに支払う分は、あっという間にペイできる
2つ目の理由として、前章で述べた通り、10年を一括で登録した場合と、5年で最初登録して、その後、やっぱりもう5年、商標権を維持した場合とで、2分野であれば費用総額の差は、約24,000円です。
商標は、”ビジネスに必要だから、維持”するわけですよね?
5年後に、その商標が必要だ、ということは、ビジネスに繋がっているはずなので、少なくとも24,000円の差額分も吹き飛ばすぐらいの成長であってほしい、と思うわけです。
ですので、ストレートに全ての顧客に、
『若干、費用が増しても、5年後、堂々と、”更新します”と言っていただけるのを、楽しみにしていますね♪』
と、伝えています(o’∀’)b
執筆:田村恭佑
(弁理士/経営コンサルタント/人間関係メンター)