
こんばんは。弁理士、経営コンサルタント、人間関係メンターの田村(たむきょん)です(プロフィールはこちら)。
ますます目が離せない、NHK連続テレビ小説『まんぷく』(2019年3月1日現在)
「インスタントラーメン」の誕生の話のため、「発明」など知的財産の話が出てくるだろう、と想像はしていたものの・・・
まさか、ここまで「知的財産オンパレード」のドラマとは・・もっと知的財産や弁理士が、注目されたら嬉しいです
・゚・(。>д<。)・゚・
見ていて、「もし私が、途中から登場させてもらえたら、きっとこういうサポートをするだろうな・・」と、「あくまで、ドラマだから!」と言われてしまいそうな妄想をしています。
その、
「もし、”まんぷく”の112話あたり(まんぷくラーメンが完成する)から弁理士として登場させてもらえたら・・・」
という妄想を、なるべく分かりやすく、記事にしましたので、お読みいただければ幸いです
( ;^ω^)v
1 就業規則と雇用契約を再検討いただく
『技術を盗んで、転職してしまった従業員がいましたよね・・?あれは、未然に防げなかったのでしょうか?』
『いくつかの方法で予防できたとは思います。
まずは、1にも2にも、従業員に等しく”守秘義務”を明確に負っていただく、そのことを認識いただく、ということですね。
「就業中に見聞きした、技術的な情報を、他者に漏らしてはいけない」ということを、就業規則にはっきり盛り込んだ上で、その規則に従うことを条件とした、雇用契約を締結してもらったほうがいいでしょう』
『正社員だけじゃなく、臨時雇用、アルバイトスタッフであっても、ですか?』
『もちろんです。むしろ、あのような同族経営の企業だと、正社員は親族がほとんどで、忠誠心は強く、一方、アルバイトスタッフは、”寄せ集め”になりやすく、忠誠心は低い可能性が高いですよね。
アルバイトスタッフにも、働いていただく前に、就業規則をしっかり理解いただいた上で、雇用契約を交わしたほうがいいでしょうね』
2 特許で守る部分と、ノウハウとして秘密にしておく部分
『まんぷく食品は、”特許”を申請して、実際に、取得に至りましたよね?あれでは、不十分なんでしょうか?』
『そうだね、その通りで、残念ながら不十分なんです。特許制度は、”更なる良い発明への足掛かり”が主目的にあります。だから、特許として申請する、ということは、全国に、その技術内容を開示してしまう、ということを意味します。
しかも、特許を取ったからと言って、単純に、”お湯をかけて3分ほどで、ラーメンになる全ての商品を販売できる権利”を、まんぷく食品が独占できるわけではないんです。』
『特許を取ったのに、独占できない?
どういう意味ですか?』
『1つの特許申請に含めていい発明は、大きくは”1つ”です。
しかも、かなり具体的な”製造工程”を特定した上で、初めて特許として認められます。
だから、逆を言えば、公開された特許情報を見て、競合他社が、少しだけ、特許と違う製造工程にアレンジしてインスタントラーメンを開発したら、その競合他社の新商品には、特許権の”行使”ができない可能性があります』
『そしたら、、まんぷく食品は、どうするのが、良かったのでしょうか?』
『似て非なる商品の乱立を防ぎたかったら、例えば以下を私はご助言するかもしれません。
- 本当に重要な製造工程についてを、少し選択の幅を込めて、特許として押さえる
(例:常温で長期保存できるようにするため、また、熱湯を注ぐだけで食すことができるようにするため、生めんを、〇℃から〇℃の油で〇分~〇分間、揚げるという製造方法)
- 出汁、スープのレシピは、ノウハウとして秘匿する。萬平と福子以外には、開示しない
- 例えば、10の工程でインスタントラーメンが完成するとしたら、1人に教えるのは、たった1つの工程のみにし、全体を教えないようにする
- 随時、商品改良をし、1つの特許に頼らず、具体的な改良方法を、少しずつ特許として取り重ねていく
』
3 ”まんぷくラーメン”という商品名を、再考いただく
『ドラマの中では、まんぷくラーメンがCMで有名になったのを受けて、”本家まんぷくラーメン”とか、”ぷくぷくラーメン”とか、模倣品が、たくさん出回りましたよね』
『そうだね。本家まんぷくラーメンを悪びれもせず販売する競合他社の社長さんは、こんなことも言っていました。
”まんぷく定食とか、まんぷくラーメンとか、そんな名前は誰も独占できない!どこにでもある商品名だろ”
非常に素晴らしい知的財産の監修のかたが、このドラマには付いているんだな、と感心して、そのセリフを聴いていました(笑)』
『たむきょんさんは、弁理士としてはどんな助言をすると思いますか?』
『”まんぷくラーメン”という名前は、その名前から、だいたいの商品の特徴が想起できますよね。そういう商品名は、特定の会社に登録商標として与えるべきものではないと考えます。特許庁も、そう判断するでしょうね(昭和32年頃なので、60年前ですね。その頃は、今よりも登録審査は、易しかったかもしれませんが)。
しかも、そういう商品名は、模倣されやすいし、たとえ商標を取っていても、その頃の、世の中の”商標”という制度の認知度次第では、あまり、防御の効果を発揮できないかもしれません。特に一気にたくさんの模倣品が生まれてしまったら、下手したら、インスタントラーメンの別名が”まんぷくラーメン”だ、という世の中の認知になってしまう可能性だって十分にあります。
(例:”ウォークマン”は、ポータブルプレーヤーの総称のように認知されましたが、実際はSONYの登録商標)
そこで、私なら、以下をご助言すると想像します。
- 上記をしっかり伝えて、”明らかに真似だと後で言いやすい、独自の商品名”を、再考いただけないか
- 商品名が決定したら、やはり、急いで商標の申請をし、早期審査の申請(当時、その制度はきっと無かったかもしれません)
- 商品のパッケージに、®マーク、そして、「〇〇ラーメンは、まんぷく食品の登録商標です」とも、明記し、”抑止効果”を高める
- 悪質で、なかなか模倣品を取り下げなかった競合他社に対しては、”謝罪広告”の掲載をさせて、信用回復も目指す』
4 ポスターも立派な知的財産「著作権」
『福子にそっくりなモデルを使った、まんぷくラーメンとわざと混同させるようなポスターまで、出来ていましたが・・・』
『そうだったね。
まんぷくラーメンが、CMだけでなく、あのようなポスターも作成しているとしたら、そのポスターは”著作物”に当たります。だから、その福子そっくりの模倣ポスターに対しても、著作権侵害だと言えるでしょうね。
CMであっても、とても印象的なラストの1シーンなどがあり、その1シーンを切り出して、そっくりのポスターにしてしまったような競合があれば、それは、十分に”著作権侵害”だと主張できると思います。』
5 「うちのほうが特許申請より先に製造・販売してたんや!」という主張に対して
『最後に・・・そういえば、本家まんぷくラーメンの社長さんが、こんなことを言っていましたよね。
”特許を取ったかもしれないけど、うちは、おたくの特許申請よりも早くから、製造・販売していたんだ。
うちの販売のほうが特許申請よりも後だと言うなら、それを証明しろ”
と・・』
『確かに、特許の申請よりも前から、同様の技術を実施していたような競合他社があれば、”先使用権”という既得権が、その他社に認められる制度はあります。
しかし・・先使用権は、あくまで、特許の申請日よりも前から、製造・販売していたことを、立証しなければならないのは、その競合他社のほうです。
だって、特許権者がそんな競合他社の製造・販売の日を立証するなんて、無理がありますよね(^∀^)
だから、その社長さんの主張は、見ていて”ちゃんちゃら可笑しい”ものでした
( ;^ω^)
NHKだけに、その社長さんに一言いわせてください。
ボーッと生きてんじゃねーよっ!(笑)』