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「広瀬香美」ニュースに見る、「芸名」は誰のものか

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「広瀬香美」をめぐるニュースの概要 シンガー・ソングライターの広瀬香美さんが、所属事務所の移転をするにあたり、条件交渉をしっかりと行わないまま移転を決意してしまったのでしょう、元所属事務所側が、「それならば、名づけの親は...

「広瀬香美」をめぐるニュースの概要

シンガー・ソングライターの広瀬香美さんが、所属事務所の移転をするにあたり、条件交渉をしっかりと行わないまま移転を決意してしまったのでしょう、元所属事務所側が、「それならば、名づけの親は当事務所なのだから、”広瀬香美”の芸名を今後使わせない」と主張をしているそうです(Yahooニュース(デイリー)はこちら

過去の「芸名」をめぐる騒動

一昨年に、「加護亜依」さんの芸名が、元所属事務所に商標登録されてしまって、本人の使用を禁止された、というニュースや先生の記事、ありましたよね?

ありましたね!それ以外にも、「美川憲一」さんも、その芸名の使用を元事務所が争った、という事案もあったようです。このように、事務所が、所属タレント芸名の”使用権”を争う事案が、後を絶ちませんね

「芸名」の使用を事務所が縛ることができるのか?

そもそも、そのように、事務所が、所属するタレントの芸名の使用権のようなものを、縛ることは、出来るのでしょうか?

いくつか、考え方がありますが、まず、事務所が所属タレントと関係良好なうちに、芸名で商標登録をしてしまうケースが見られます。「加護亜依」で商標登録はされていましたからね。これは、当人が承諾をしているはずです。次に、事務所に所属する際に、タレントとの間で、契約書を締結しているケースが多いと思いますが、その中に、「芸名の使用は事務所に権利が帰属する」という条項を入れ込んでいるケースも多いと思います。これらの行為で、「芸名」の使用を事務所が縛ることができる、と言えるわけではありませんが・・

「芸名」を商標登録してしまえば、独占できるのか?

加護亜依さんの事案でも話題になりましたが、事務所が商標登録してしまうと、加護亜依さん自身は、その事務所と例えば関係がこじれた時に、事務所の許可なく、「加護亜依」と名乗ることは出来なくなるのでしょうか?

Yesでもあり、Noでもある、というのが私の見解です。例えば、「加護亜依」商標は、41類、「知識の教授」の分野で主に商標登録されています。例えば加護亜依さんが、「加護亜依のダンススクール!」という教室名で、ダンススクールを開講することは、ちょっと出来ないかもしれません。一方で、「加護亜依」は芸名とは言え、「自己の名称」であることに変わりはないので、加護亜依さんが、普通に芸能活動を行って、そのお名前で、テレビ番組に出たり、雑誌の記事になったり、ブログを書いたり。こういうことは、商標権では制限できません。「人格権の保護」という考え方です。

芸能人自身の「芸名」使用についての正当な権利

それなら、広瀬香美さんは、やっぱりご自身で「広瀬香美」と名乗ることは、問題なさそうでしょうか?

商標を調べると、まだデータベースには「広瀬香美」で誰か、どこか、が商標取得しているということはなさそうです。仮に、元事務所が広瀬香美さんと関係が悪くなり、急いで、商標を取ろうと申請したとしても、特許庁は、「広瀬香美さんの許可を取っていますか?」という指摘をするでしょうから、現実的には、今から「広瀬香美」で、元事務所が商標登録を得ることは、難しいと考えます。

なら、大丈夫そうですね!

あとは、元事務所と、広瀬香美さんの間で、事務所へ所属する段階で、きっと「契約書」を締結しているはずです。その中にはおそらく、「芸名の使用権が事務所に帰属する」という主旨の条項を盛り込んであると思います。法律で、氏名や芸名の使用に関する明確な条項がない以上、その契約書の有効性が争われるのだと想像します。

契約の有効性

そんな契約って有効なんでしょうか?!広瀬香美さんが、契約書に書いてあるからと言って、ご自身の芸名が名乗れなくなるなんて・・

私見ですが、争ったら、最後は広瀬香美さんご自身が、勝つのではないかと想像します。それは、「人格権の保護」という前提からです。商標登録という、国に正式に認めてもらう制度ですら、「自己の氏名・名称」を使用する人・企業に対しては、権利行使できないという決まりを法律に定めています。商標制度でさえ、そうなのですから、民事による契約書ではなおさら、「自己の氏名・名称の使用」が、束縛されるようなことがあっては、ならないと考えます。命名がたとえ元事務所であったとしても、その「広瀬香美」という名前、ブランドの価値は、広瀬香美さんご自身の、デビューから今日までの、血のにじむような努力があってこそ、存在するわけですし、それを、「命名したから」「契約で縛っているから」ということのみを持って、本人からはく奪できるものではないと、私は考えます。芸名とは、当人と「一体不可分」の関係だと断言しても間違えないと存じます。(タイガーマスクなどは別ですが・・)

記事をお読みくださり、ありがとうございます。

商標・知的財産、民間資格の設立、人間関係、これらで、ご相談いただけることがありましたら、是非お気軽に、こちらからお問い合わせください。近日中にご返信いたします。

みぎのうで知財事務所(代表 田村)

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